増水すると浮き、水が引くと地面に降りる校舎を、竹と使い終えたドラム缶で建てた
Arcadia Education Project
ボストン建築協会は2020年6月4日の頁で、この校舎が乾季には地面に載りモンスーンの期間は浮くこと、審査団の評が、海面の上がる時代に地元で手に入る材料で安く確かなものを建てられる例だとしていることを載せている。2020年より後に、この学校の現在を書いた出典は見つけられなかった。
何をしたか
ダッカ郊外ケラニガンジの南カナルチョルで、年に数か月水に浸かる川べりの敷地に、水が来れば浮き、水が引けば地面に降りる校舎を建てた。プロトム・アロは2019年8月29日に、この校舎がドラム缶と竹と縄でつくられていることを伝えている。METALOCUS が載せた設計事務所の説明によれば、土を盛って地面を上げる、あるいは高床にするという通常のやり方は敷地の地形に合わず、敷地につないだまま乾季も雨季も使える両生のモジュール式の構造が答えになった。ボストン建築協会は2020年6月4日の頁で、浮きに使い終えた30ガロンのドラム缶が竹の枠に収められていることを載せている。
誰が始めたか
デイリー・スターは2019年9月14日に、設計者 Saif Ul Haque が、依頼主である Maleka Welfare Trust の会長 Razia Alam に謝意を述べ、実験的な構造をとる時間と自由を与えてくれたと語ったことを伝えている。METALOCUS が載せた設計事務所の説明は、依頼主を私設の社会福祉団体 Maleka Welfare Trust とし、同団体が、既にあった就学前教育の施設を移し、単身の女性のための寮・保育所・職業訓練所を加えるために土地を買ったとしている。同誌の編集部が書いている前半では、この施設は寮ではなく避難所・保育所・職業訓練所とされている。
デイリー・スターの記事末尾の節とボストン建築協会の頁は、語句がそのまま同じ記述を載せている。それによれば、次のとおりである。Razia Alam は英国で40年教えたあとバングラデシュに戻り、恵まれない子どものための学校を自分の年金で始めた。借りていた校舎の期限が切れたため土地を探したが、予算の都合で開発に向かない土地しか選べなかった。学校を水の近くに置きたいと考えて川べりの土地を買ったところ、そこはモンスーンの時期に水に沈む土地だった。
デイリー・スターは2019年9月14日に、設計者が UNB の聞き取りに、川から砂を採って地面をならすやり方には自分は乗り気でなかった、それは環境により多くの問題を持ち込むからだと語ったこと、影響をよく調べないまま環境と景観をまるごと変えることはできないと述べたことを伝えている。
いくらかかったか
建設費を書いた出典は1本も無い。 5本のいずれも、工事の費用にも運営の費用にも触れていない。
分かるのは規模と、学校そのものの成り立ちだけである。年金の話は、この校舎の建設費ではなく、Razia Alam が以前から続けていた学校を始めたときのことである。METALOCUS は記事末尾のデータ欄で面積を486平方メートルとしている。語句がそのまま同じ記述として、デイリー・スターとボストン建築協会は、借りていた校舎の期限が切れて土地を探したとき、買える範囲が予算で限られていたことを書いている。ボストン建築協会は、竹が近隣の村で買われ、川を流して敷地まで運ばれたとしている。
真似するなら最低何が必要か
水を追い出さずに受け入れる。 ボストン建築協会は2020年6月4日の頁で、生態系を壊して盛り土の台をつくることも、乾季に高くなりすぎる高床にすることも避け、敷地につないだうえで地面に載ることも水に浮くこともできる構造にしたと書いている。同頁によれば、建物の底の面は、砂・土・地元の煉瓦を詰めた土嚢の擁壁でならされ、その上に使い終えたタイヤを緩衝材として留めてある。
浮力は、手に入るもので出す。 同頁によれば、校舎は3種類の竹でつくられ、竹の枠に収めた使い終えた30ガロンのドラム缶によって浮く。竹は軽さと持ちのよさで選ばれ、近隣の村で買われて川を流して運ばれた。METALOCUS が載せた設計事務所の説明も、竹を用途ごとに種類を変えて使ったこと、ドラム缶や古い車のタイヤなど、多くを使い回したものでまかなったことを挙げている。
水に強くするやり方は、その土地にすでにある。 ボストン建築協会によれば、下部の構造と係留の柱と屋根に使う竹は薬剤で処理され、それ以外の部材は地元のガブ(gaab)の実を煮てつくった液を塗って防水された。同頁はこれをバングラデシュの伝統的な方法としている。継ぎ手の多くは、錆びる針金ではなく縄で結ぶやり方をとっている。
電気を前提にしない。 同頁によれば、教室の弓なりの竹の屋根は柱を要らなくしており、工事はいくつかの電池式のドリルを除いて手道具だけで行われた。
今どうなっているか
プロトム・アロは2019年8月29日に、この校舎が、タタルスタンのカザンで発表された2019年のアガ・カーン建築賞の6件のうちの1つに選ばれたと報じている。同紙によれば、最終候補は20件で、うち2件がバングラデシュのものだった。同紙は、この賞が1977年に始まり3年ごとに贈られること、2016年にもバングラデシュの建築家2人が受けていることを併記している。デイリー・スターは2019年8月29日に、受賞した6件が100万ドルを分け合うと書いている。
ボストン建築協会は2020年6月4日の頁で、審査団の評として、海面が上がっていく時代に、地元で手に入る材料で安く確かなものを建てられることをこの学校が示していること、単純で小さいながら、浮力・川の流れに対する係留・廃棄物の扱いという難しい問題を解いていることを載せている。
2020年より後に、この学校が今どうなっているかを書いた出典は見つけられなかった。 そのため status_current は判定不能とした。ベンガル語でも探したが、出てくるのは2019年の受賞の報道と、robots.txt が我々を塞いでいる媒体の特集記事だけだった。敷地が水に浸かっている期間も、5か月とする出典と4か月とする出典に割れており、1つに丸めていない。ボストン建築協会の頁は同じ面の中で「1年の3分の1」とも「毎年4か月」とも書いているが、これは同じ長さの別の言い方である。なお5か月とする2本のうち、METALOCUS の記述は設計事務所自身の説明の中にある。デイリー・スターは賞金額と賞の創設年について主催者の配信に拠ると書いているが、この期間の記述には出どころを書いていない。
出典
- Amphibious modules. Arcadia Education Project, by Saif Ul Haque | METALOCUS — METALOCUS(2019-05-24)
- আগা খান অ্যাওয়ার্ড পেল 'আর্কেডিয়া এডুকেশন প্রজেক্ট' | প্রথম আলো — প্রথম আলো(2019-08-29)
- Bangladeshi project wins Aga Khan Award | The Daily Star — The Daily Star(2019-08-29)
- Think about reasons while going for change: Bangladeshi award-winning architect | The Daily Star — The Daily Star(2019-09-14)
- Boston Society for Architecture | Arcadia Education Project — Boston Society for Architecture(2020-06-04)
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