村の名を冠したヨーグルトを中国企業が商品化し、ヨーグルト祭りで中国人観光客を呼ぶまちになった
Momchilovtsi
2015年の第1回ヨーグルト祭りから2026年の寄付まで、BTAとBNRが継続して報じている。
何をしたか
ブルガリア南部ロドペ山脈の村モムチロフツィで、伝統的な自家製ヨーグルトが、上海の企業による商品化をきっかけに、中国人観光客を呼ぶまちの産業に育った。BTA(2015年9月12日)によれば、ブライト・デアリー・アンド・フードの調査班は2008年の視察でこの村を見つけ、ブルガリアから輸入した乳酸菌を使って、村の名を冠した新ブランド「モムチロフツィ・ヨーグルト」を発売した。以来、村では夏にヨーグルト祭りが繰り返し開かれ、中国語講座や中国での観光展示会への出展など、この乳製品を軸にした商いと交流が積み重ねられている。
誰が始めたか
始めたのは上海の乳業大手ブライト・デアリー・アンド・フードである。 BTA(2015年9月12日)によれば、同社は2008年の調査旅行でモムチロフツィ村を見つけた。同記事は、中国からの調査団が村の美しさと住民の親切さに魅了されたという逸話を、真偽の確認は取れていないブルガリア国内の言い伝えとして紹介している。同社はブルガリアから、1905年に医学を学ぶブルガリア人スタメン・グリゴロフがジュネーブで発見・報告した乳酸菌ラクトバチルス・ブルガリクス(系統名L99)を輸入し、これを使って乳酸発酵させた飲むヨーグルトを開発した。
ブランドの発売年は出典によって食い違う。 BTA(2015年9月12日)は2010年12月に新ブランドを発売したと明記する一方、BNR(2024年12月2日)は2009年に上海の国有企業がこのヨーグルトを市場に投入したと書き、BTA(2026年8月29日)も村長シイカ・スルコバ氏の発言として、ブランドは2009年以来市場にあると伝えている(discrepancies参照)。
村の側では、村長シイカ・スルコバ氏が繰り返し表に立っている。 BNR(2024年12月2日)によれば、同氏はブライト・デアリーの調査団が正式にブランド化する前の視察で村を訪れた当時を振り返り、視察団が最も印象づけられたのは村の立地・自然・住民の親切さ・満天の星だったと語っている。観光振興の面では、BTA(2015年9月12日)によれば2015年の第1回ヨーグルト祭りを観光相ニコリナ・アンゲルコワが開幕し、BTA(2024年8月26日)によれば2024年には観光相エフティム・ミロシェフが、この祭りはブルガリアと中国を結ぶ橋になっていると述べたと同省報道官が伝えた。BNR(2024年12月2日)はまた、スモリャン「対中国友好協会」代表モムチル・カライヴァノフ氏が、村と近隣地域を中国の観光市場に売り込む活動に加わっていることを伝えている。ソフィアの孔子学院も、毎年夏に村で開かれる中国語講座を支援している(同記事)。
いくらかかったか
企業側の売上規模は、BTA(2015年9月12日)に具体的な数字がある。 同記事によれば、モムチロフツィの名を冠したヨーグルトはブライト・デアリーに2億元超をもたらしたという。同社の2013年の純利益は前年比30.4%増の4億600万元(6590万ドル)で、モムチロフツィ・ヨーグルトは総営業収入の20%を占め、その売上は32.2億元に倍増した。同記事はまた、2014年の同社全体の売上予測を187億元・利益予測を4億7400万元とし、2015年についてはモムチロフツィ・ヨーグルトの売上が15億元に達すると見込まれていると書いている(いずれも見通しの数字であり、実績ではない)。
村側への具体的な資金提供は、2026年の記事に確認できる。 BTA(2026年8月29日)によれば、ブライト・デアリーは2026年のヨーグルト祭りで村に3万6000ユーロの寄付券を贈り、村長スルコバ氏に手渡した。この資金は村のスポーツ施設の改修に充てられるという。乳酸菌の使用そのものに対する対価や、村・自治体への定期的な支払いの有無については、参照した8本のいずれにも記載がなく確認できていない。
真似するなら最低何が必要か
1. 地元にすでにある資源(菌・品種・技法)と地名を、外部の企業が商品化できる形に翻訳すること。 BTA(2015年9月12日)によれば、ブライト・デアリーは乳酸菌ラクトバチルス・ブルガリクス(系統名L99。同記事はブルガリアの緯度帯に広く分布するとしている)をブルガリアから輸入し、研究と準備を重ねたうえで、村の名を冠した新ブランドとして発売した
2. 観光客を迎える年中行事を、送り出す側の企業と共催で作ること。 BNR(2024年8月30日)によれば、ヨーグルト祭りは村長事務所・中国側の提携企業・その他の関係者が共同で開催しており、BNR(2025年8月31日)によれば2025年は8月29日から31日の3日間、乳製品や工芸品の展示、伝統文化の実演が行われ、中国からの来賓には「長寿証明書」が贈られる予定だと報じられた
3. 来訪者の母語に向けた学びの場を地元に作ること。 BNR(2024年12月2日)によれば、村ではソフィアの孔子学院の支援で毎年夏に中国語講座が開かれ、地元住民も参加している。同記事で対中国友好協会のモムチル・カライヴァノフ氏は、寧波の観光展示会について「私たちは観光地として自分たちを売り込む機会を得た」と述べ、モムチロフツィを軸に地域を売り込み、渡航が容易な中国の中間層(3億〜5億人規模とされる)を見据えていると語っている
4. 地元の小規模生産者の声を、企業主導の祭りの中でも拾う場を残すこと。 BTA(2026年8月29日)によれば、2026年の祭りでは来場者向けの乳製品直売のほか、家庭での手作り食品を合法的に売れるようにする制度を求める署名活動が行われた。同記事によれば、地元の小規模生産者で出展者の一人は、家庭で作られる食品こそ自分たちの伝統の味であり、子どもたちには本物のブルガリアの食べ物を食べる権利があると述べ、求めているのは規制の撤廃ではなく明確なルール作りだと強調している
今どうなっているか
2026年8月29日時点でBTAが確認できた最新の動きは、その日開幕したヨーグルト祭りである。 同記事によれば、祭りは翌日まで続き、コンサート、「ミス・ロドペ2026:ヨーグルトの女王」コンテスト、「長寿の秘訣:ヨーグルトの伝統から健康的な暮らしへ」と題した討論会が予定されていた。ブライト・デアリーはこの場で村に3万6000ユーロの寄付券を贈り、資金は村のスポーツ施設の改修に充てられるという。
新型コロナウイルスによる中断からの回復は、2024年の記事に語られている。 BNR(2024年12月2日)によれば、渡航制限が明けたのは中国でも遅く、現地の観光市場が上向き始めたのは2024年になってからだった。村長スルコバ氏は、少しずつコロナ前の水準に近づきつつあると述べている。同記事によれば、村と近隣のスモリャン地方は中国・寧波での観光展示会に参加し、対中国友好協会は村を中国の観光市場で認知させる活動を続けている。
祭りの規模と来場者層は、2025年の記事に描かれている。 BNR(2025年8月31日)によれば、2025年のヨーグルト祭りは8月29日から31日まで開かれ、乳製品と地元工芸品の展示、児童向けの創作教室、ロドペ地方の豆料理やバター作りの実演などが行われ、ブルガリア内外から多数の来場者を集めたという。
乳酸菌の輸出以降、中国人観光客が村を訪れ続けていること自体は複数の年にわたって確認できるが、年間の来訪者数や村の宿泊業がどれだけ育ったかは、参照した8本のいずれにも数値の記載がなく確認できていない。
出典
- Chinese Company with Seven-year History of Momchilovtsi Village Yoghurt Production — BTA(ブルガリア通信社)(2015-09-12)
- Yogurt Festival to Take Place in Momchilovtsi on September 1, 2 and 3 — BTA(ブルガリア通信社)(2023-08-30)
- Miss Rhodope 2024 to Be Chosen at Yogurt Festival in Momchilovtsi — BTA(ブルガリア通信社)(2024-07-02)
- Tourism Minister Miloshev: Yogurt Fest in Momchilovtsi Serves as Bridge between Bulgaria, China — BTA(ブルガリア通信社)(2024-08-26)
- Momchilovtsi Yogurt Festival Showcases Rhodope Dairy Products, Bulgarian-Chinese Traditions — BTA(ブルガリア通信社)(2026-08-29)
- Yogurt Festival opens in Momchilovtsi village — БНР Radio Bulgaria(ブルガリア国営放送 英語版)(2024-08-30)
- Momchilovtsi or Musiliyan - why do the Chinese love the picturesque Rhodope village — БНР Radio Bulgaria(ブルガリア国営放送 英語版)(2024-12-02)
- Yogurt Festival in Momchilovtsi: culture, flavor and Rhodope traditions — БНР Radio Bulgaria(ブルガリア国営放送 英語版)(2025-08-31)
この記述は間違っていますか。受け取ってから2週間以内に、直すか直さないかを返します。