鉄道で栄え衰退した村が、駅舎の保存と貨物鉄道インフラへの投資で人口回復をめざした
McAdam
開始年1996年から3年以上あとの出典が2007年・2011年・2015年・2019年・2022年と5回ある。
何をしたか
マッカダムはニューブランズウィック州の村で、20世紀前半はカナダ太平洋鉄道(CPR)の主要な乗換駅として栄え、1956年に人口2,803人を数えた。蒸気機関からディーゼルへの転換と道路輸送の普及で鉄道の仕事が減り、人口は長期的に減少した。村は1995年に駅舎の所有権を引き継ぎ、保存委員会が1996年から改修を進めて観光拠点に再生した。2012年に軍役を終えて村へ戻ったケン・スタニックス氏が当時の町長に働きかけ、住民主体の移住者誘致も始まった。2022年には連邦政府とJ.D.アービン社系の鉄道会社が、マッカダム―セントジョン間の鉄道インフラ増強にそれぞれ2,116万ドルを投じると発表した。
誰が始めたか
駅舎の保存を担ってきたのはMcAdam Historical Restoration Commission(MHRC、保存委員会)である。National Trust for Canadaの記事(2007年4月14日付、Ronald J. Roy執筆)によれば、1994年12月にマッカダムでの定期旅客列車の運行が終わり駅は一度閉鎖されたのち、CPRが東部の運行から撤退した際に駅舎はNew Brunswick Southern Railway社に取得され、その後同社からMHRCに移された。同記事はMHRCが1996年から改修事業を担っており、20〜30人の主に高齢の会員が携わってきたと伝えている。当時の村長フランク・キャロル氏もMHRC委員長を兼ね、連邦・州政府との折衝にあたったという。
住民主体の人口回復の取り組みは別の経緯から始まった。Global News(2019年2月1日付、記者Silas Brown)によれば、軍でのキャリアを終えて2012年に村へ戻ったケン・スタニックス氏は村の衰退を見て、当時の町長フランク・キャロル氏に「何とかしなければ」と持ちかけた。2人は住民の意見を集める公開集会を開くことを決め、そこから生まれたMcAdam Community Action Groupが、産業・観光・退職者誘致の3本柱で取り組みを進めたと同記事は伝えている。スタニックス氏はその後、自ら村長を務めるようになった。
2022年の鉄道インフラ増強を主導したのは、連邦政府(運輸省)とNew Brunswick Southern Railway(J.D. Irving Limited傘下)である。Trains.com(2022年5月25日付、記者Bill Stephens)によれば、この発表はカナディアン・パシフィック(CP)社が2020年に短距離鉄道Central Maine & Quebecを買収し、同路線に9,000万ドルを投じて改良を進めてきた流れの中で行われたという。
いくらかかったか
駅舎の改修費について、National Trust for Canada(2007年4月14日付)は、追加区画を公開するのに必要な費用を38万ドル超と見積もったと伝えている。財源の内訳は、連邦のAtlantic Canada Opportunities Agency(ACOA)のStrategic Community Investment Fundから2005年・2006年に23万5,000ドル、ニューブランズウィック州政府のHeritage Branchから3万ドル、州のRegional Development Corporationから6万5,000ドルで、残る5万ドルは人口1,500人余りの村が自らガイドツアー(1人3ドル)やイベント等で集めたという。
2022年の鉄道インフラ増強については、Trains.com(2022年5月25日付)によれば、カナダ運輸省がマッカダム―セントジョン間の線路・橋梁・分岐器の改良やターミナル整備に2,116万ドルを投じ、New Brunswick Southern Railway(J.D.アービン社傘下)が同額を拠出すると発表された。同記事によれば、この鉄道関連の投資とセントジョン港の拡張事業(連邦政府が最大2,100万ドルを投じる)をあわせ、連邦政府はこの日発表した2事業の総額を4,200万ドルとしている。
住民主体の1ドル宅地販売や、それに伴う住宅整備・上下水道等の費用については、今回参照した4本の出典に具体的な金額の記載がなく確認できなかった。
真似するなら最低何が必要か
出典から取り出せるのは6つである。
1. 所有権と管理主体を早期に一本化すること。 National Trust for Canada(2007年)によれば、CPRが撤退した際に駅舎はNew Brunswick Southern Railway社を経てMHRCに移され、MHRCが1996年以降の改修を一貫して担った。Spacing National(2015年)は所有権が1995年に村へ移ったと伝えており、経緯の記述は出典間でわずかに異なる(discrepancies参照)。
2. 資金を連邦・州・地域の3層から組み合わせること。 National Trust for Canadaによれば、改修費38万ドルのうち23万5,000ドルを連邦のACOAが、3万ドルを州のHeritage Branchが、6万5,000ドルを州のRegional Development Corporationが負担し、残る5万ドルを人口1,500人余りの村自身が集めた。
3. 保存した施設を、見せるだけでなく稼ぐ場にすること。 National Trust for Canadaによれば、駅舎はガイドツアー(1人3ドル)を備え、年間およそ2万5,000人の来訪者を集めている。Spacing National(2015年)も、駅舎がレストランを備えていると伝えている。
4. 衰退を認めることから始め、住民の意見を集める場を設けること。 Global News(2019年)によれば、2012年に村へ戻ったケン・スタニックス氏は村の衰退を町長に持ちかけ、2人はまず住民の意見を集める公開集会を開いた。
5. 移住の障壁を具体的な仕掛けで崩すこと。 同記事によれば、村は売れ残っていた宅地を1ドルで売り出し、600件近い問い合わせを集めて、直近2年で62戸の住宅が売れたという。
6. 地域外の民間投資の波に、既存インフラで乗ること。 Trains.com(2022年)によれば、カナディアン・パシフィック社がセントジョン港へのルートに9,000万ドルを投じ大西洋岸に復帰する動きにあわせ、連邦政府とNew Brunswick Southern Railwayがマッカダムの鉄道ターミナルにも投資すると発表した。
確認できないのは、①1ドル宅地販売やそれに伴うインフラ整備の総費用、②2022年に発表された鉄道インフラ投資がその後どこまで実施されたか、の2点である。いずれも今回参照した4本の出典に記載がない。
今どうなっているか
2026年9月時点で確認できた最新の出典は、2022年5月25日付のTrains.comの記事である。同記事によれば、連邦政府とNew Brunswick Southern Railway(J.D.アービン社傘下)は、マッカダム―セントジョン間の鉄道インフラにそれぞれ2,116万ドルを投じると発表した段階であり、その投資がその後どこまで実施されたかを示す出典は、今回の調査では確認できなかった。
人口については、Spacing National(2015年8月27日付)が1956年の最盛期2,803人・2011年国勢調査時1,284人と伝えている。Global News(2019年2月1日付)は当時の人口を約1,150人としたうえで、1ドルでの宅地販売等により直近2年で62戸の住宅が売れ、人口が約1,250人まで回復したと報じた。2026年9月時点でカナダ統計局が公表している最新の国勢調査では、マッカダム村の人口は1,173人である。
否定的な報道や、鉄道インフラ投資計画への批判は、今回参照した4本の出典の範囲では見つからなかった。
出典
- McAdam, New Brunswick and the struggle of small communities — Spacing National(2015-08-27)
- It takes a village: Inside the effort to save the town of McAdam, N.B. — Global News(Corus Entertainment)(2019-02-01)
- The McAdam Train Station, a Place for People — National Trust for Canada(2007-04-14)
- Canada to fund expansion at Port Saint John, short line New Brunswick Southern — Trains(Firecrown Media)(2022-05-25)
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