くじで選んだ50世帯に市営住宅を渡し、大学が対照群を置いて測った。連立が変わって打ち切られた
Rapid Re-Housing
2018年12月、オストラヴァ大学とマサリク大学の調査として、48世帯が1年後に契約を更新し、市の支出が年およそ150万コルナ減ったと報じられた。2019年4月、市長は事業を続けないと述べ、副市長によれば契約が続いていたのは46世帯だった。
何をしたか
ブルノ市が2016年、住まいに困っている400世帯あまりの中からくじで50世帯を選び、住宅手当の額まで家賃を下げた市営住宅を貸すと申し出た。引っ越しは2017年6月まで続いた。世帯には社会福祉の担当者が付き添った。あわせて100世帯を対照群に置き、オストラヴァ大学が結果を測った。
2018年、50世帯のうち48世帯が1年後に契約を更新し、そのうち78%に滞納が無かったと報じられた。オストラヴァ大学の研究者は、子どものけがが12%から2.4%に下がり、入院が大きく減ったと述べている。市の支出は年およそ150万コルナ減ったという調査結果も出た。
市議会選挙のあと連立が組み替わり、2019年4月、新しい市長は前の連立の事業を引き継がないと述べた。市長によれば事業は終わり、うまくやれた世帯は住宅に残れる。
誰が始めたか
持ち込んだのは、当時の連立にいた小さな政治運動である。 ČT24(2018年12月18日)は、Rapid Re-housing を前の任期に導入したのが Žít Brno で、ピラート党の支持を受け、ANO・KDU-ČSL・緑の党・TOP 09 とともに連立を組んでいたと書いている。Deník Referendum(2018年12月19日)も同じ5党の連立を挙げている。
議決は割れていた。 Aktuálně.cz(2017年3月19日)によれば、市議会が社会的包摂の戦略を承認したのはちょうど1年前で、社会民主党(ČSSD)・ODS・当時野党だった TOP 09 は賛成しなかった。 採決の直前、労働社会問題相 Michaela Marksová(ČSSD)が同じ党の市議を説得しに来たが、ČSSD は最後まで賛成せず、それでも議会は計画を可決した。同相は同紙に、この計画は非常に興味深く、ブルノが手をつけたことを喜ぶとし、評価が気になっており、そこから他の都市への勧めが決まると述べている。
実務は3者で分けている。 Radiožurnál(2018年6月27日)は、費用が3つの事業の相手——実施を保証し社会福祉の仕事を部分的に担ったブルノ市、調査と評価を丸ごと引き受けたオストラヴァ大学、世帯への社会福祉の仕事を担った IQ Roma Servis——の作業に充てられたと書いている。1年後の評価にはマサリク大学も加わった(ČT24 2018年12月18日)。
当時の市長は Petr Vokřál である。 同氏は Radiožurnál に、ブルノが新しい社会の事業の先駆けであり、目標は子どものいる世帯のホームレス状態をこの街で終わらせることだと述べている。
いくらかかったか
財源はEUの補助で、市の負担はごく小さい。ただし2本の出典は数える範囲が違う。
- Radiožurnál(2018年6月27日)は、事業の総額(celkové náklady)が970万コルナで、市が出したのは総額のおよそ1.6%だと書いている
- ČT24(2018年12月18日)は、1年あたりの費用(roční náklady)が1,000万コルナで、うち950万はEUの補助、残る50万のうち15万をブルノ市が出し、残りをオストラヴァ大学や IQ Roma Servis といった協力団体が負担したと書いている
総額のはずの額が、1年あたりの額より小さい。 どちらが正しいかは判定できないので discrepancies に並置した。なお2017年3月の時点で、ブルノの ODS の代表 Libor Šťástka は、この事業が納税者にほぼ1,000万コルナかかると述べて批判していた(Aktuálně.cz 2017年3月19日)。
減った側の額も出ている。 Deník Referendum(2018年12月19日)と ČT24(2018年12月18日)は、オストラヴァ大学とマサリク大学の共同研究として、主に一時保護の住まいと子どもの施設での養護の費用で、公共の支出が年およそ150万コルナ減ったと伝えている。
契約更新のための小さな基金があった。 ČT24(2019年4月9日)は、オストラヴァ大学の Štěpán Ripka の説明として、民間の資金による支援の基金が、契約を更新する時期に9世帯へ1回かぎり4,000コルナほど、合わせて4万コルナ足らずを贈ったと書いている。更新の条件が家賃の無滞納だったためである。同じ Ripka の説明でも、Český rozhlas Plus(2019年6月12日)は「社会福祉の担当者が自分の金から4万コルナ近くを出した」と書いており、出したのが基金か担当者かで表現が食い違っている。
終了時の滞納額も出典で数え方が違う。 ČT24(2019年4月9日)は滞納の総額をおよそ45万コルナ、条件を満たせず返された3戸の分をさらに25万コルナとしている。Český rozhlas Plus(2019年6月12日)は、家賃の滞納が50万コルナ超、ごみの手数料が別に25万コルナ、3世帯の分がさらに25万コルナと書いている。どちらも、滞納の半分近くは1万コルナ未満の小さな額で、分割の約束を守っている世帯があるとしている。
真似するなら最低何が必要か
1. 選び方をくじにすること。 ČT24(2018年12月18日)によれば、事業が始まった時点でブルノには住まいに困っている世帯が400を超えており、そこから50世帯をくじで選んだ。 Aktuálně.cz(2017年3月19日)は、これに対する反対の言い分もそのまま載せている——ČSSD の Oliver Pospíšil は、多くの世帯がかなり大きな滞納者で、滞納を解く意思があるかが明らかでないとし、何の違反もしていない他の申込者を悪い立場に置くと述べている。
2. 家賃を住宅手当の額に合わせること。 同記事によれば、市は選ばれた世帯に住宅手当の額まで下げた家賃で市営住宅を貸した。世帯には社会福祉の担当者が付き添い、家賃の支払いをこなせるように助けた(ČT24 2019年4月9日)。
3. 対照群を先に置くこと。 Aktuálně.cz(2017年3月19日)は、事業の一部としてさらに100世帯が対照群に置かれ、住宅を得た人の状況が良くなったか——失業や子どもの欠席が減ったか——を比べると書いている。評価は専門家が行うとされていた。
4. 測る役を大学に渡すこと。 Radiožurnál(2018年6月27日)によれば、オストラヴァ大学が調査と評価を丸ごと担った。同大学の Štěpán Ripka は、子どものけがが12%から2.4%に下がり、入院が大きく減り、63回にわたって抗生物質を使わずに済んだと述べている。同記事は、最初の半年では家計の安定に大きな効き目が確かめられなかったことも書いている。ČT24(2018年12月18日)は、1年後の調査で引っ越しの危険・母親が病気になる危険・家族の入院や救急車を使う危険・子どもが代替養育に入る危険がいずれも下がり、母親の健康の状態は良くなったとしている。
5. 更新の条件を満たせない世帯を、少額で拾う仕組みを用意すること。 契約更新の条件は家賃の無滞納だった。ČT24(2019年4月9日)によれば、9世帯が1回かぎり4,000コルナほどの支援を受けた。合計は4万コルナに満たない。この額で更新の可否が分かれている。
6. 選挙の周期をまたぐ設計にすること。 この事例が止まったのはここである。 ČT24(2018年12月18日)は、1年後の評価が出た時点ですでに市議会選挙のあとに連立が組み替わっており、事業を続けるかは決まっていないと書いている。Deník Referendum(2019年4月10日)によれば、ピラート党の解釈では Rapid Re-Housing は2018年8月に形式上終わっていた。評価の報告が出るより前に、決める側が入れ替わっている。
今どうなっているか
2026年8月時点で確認できた最も新しい記録は、2019年6月13日の Český rozhlas(Radio Wave)である。
2019年4月、市は事業を続けないと決めた。 ČT24(2019年4月9日)によれば、市長 Markéta Vaňková(ODS)は、前の連立の事業を引き継がないとし、うまくやれた世帯は住宅に残れるが、もう事業の枠組みには属さないと述べた。 市議会は最終報告を賛成41・反対4・棄権4で承認し、52人が半年ごとに世帯の様子を報告させることを決めた。副市長 Robert Kerndl(ODS)によれば、この時点で契約が続いていたのは46世帯で、さらに6世帯が危うい状態にあった。事業を持ち込んだ Žít Brno の元副市長 Matěj Hollan は、市長も副市長も事業は続くと自分に約束していたと述べている。
市は代わりに省の補助を取りに行くとした。 Deník Referendum(2019年4月10日)によれば、労働社会問題省は Housing First の名で限定的な社会住宅の事業に合わせて1億5,000万コルナを EU の事業計画(Operační program Zaměstnanost)から充て、ブルノは数千万コルナ規模を申請するとしたが、この時点で具体的な計画は示していなかった。 同記事は、省がこの補助の案内文で、終わったブルノの事業を引き合いに出し、住宅を得た世帯の96%が家賃を払い続けられたと書いていることを伝えている。
その後、区の側でも否決されている。 Český rozhlas(2019年6月13日)によれば、ブルノ中央区の議会は Housing First の継続を否決した。賛成は45人中15人だった。 野党(ピラート党・緑の党・Žít Brno)は30戸を充てる案を出していた。副市長 Kerndl は、点数の付け方に賛成できないとし、依存性のある物質の使用や一時保護の住まいからの退去に点が付くため、最も困難な申込者に住宅が回ると述べている。 同記事は、市全体としての決定が2019年6月18日に市役所で議論されるとしている。
その2019年6月18日に何が決まったかは、参照した9本のどこにも書かれていない。 出典はここで途切れている。
受けた賞は3つ挙がっているが、いずれも別々の出典による。 Radio Wave の論説(2018年10月12日・筆者の見解として掲載されたもの)は2010年から2017年の欧州連合で住宅の困窮に取り組んだ最良の事業として1位を挙げ、Deník Referendum(2019年4月10日)は省の案内文が SozialMarie を挙げていると書き、Český rozhlas(2019年6月13日)は RegioStar Awards を挙げている。
ブルノの外へは広がっている。 Český rozhlas Plus(2019年6月12日)は、この省の公募がブルノの事業から出ていると書き、トルトノフでは地域のカリタスが500万コルナ超を申請し、プルゼニ周辺のほかホドニーン・イェセニーク・チェスケー・ブジェヨヴィツェ・イフラヴァが参加に関心を示していると伝えている。イフラヴァでは市の見積もりとして、屋根のない個人が最大200人、住まいに困る子どものいる世帯が最大100あるとされる。
出典
- Brněnský experiment s byty pro chudé: Preferujete neplatiče, neziskovky bobtnají, zlobí se opozice — Aktuálně.cz(2017-03-19)
- Brněnský projekt pro lidi bez domova uspěl. Bydlení si po roce udrželo 96 % rodin — Český rozhlas(2018-06-27)
- Housing First v ohrožení. Bude úspěšný brněnský projekt zrušen z ideologických důvodů? — Český rozhlas(2018-10-12)
- Brno dalo padesáti rodinám bez domova bydlení. Po roce je většina z nich bez dluhů — ČT24(2018-12-18)
- Rapid Rehousing Brnu ušetřil peníze, většina zabydlených rodin nemá dluhy — Deník Referendum(2018-12-19)
- Brno končí se zabydlováním lidí v nouzi. Projekt pomohl padesáti rodinám — ČT24(2019-04-09)
- Rapid Re-Housing nepokračuje, Brno jej chce nahradit dotacemi z ministerstva — Deník Referendum(2019-04-10)
- Housing first. Dotační program na bydlení pro chudé inspirovalo Brno, to s jeho pokračováním váhá — Český rozhlas(2019-06-12)
- Radnice Brna-střed odmítla pokračování projektu Housing First. Nejchudší lidé byty nedostanou — Český rozhlas(2019-06-13)
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