2007年に消防基準を理由に閉じられたテレビ塔の展望階を、2012年の全面改修で放送史をテーマにした体験型の公共空間として開き直した
Tallinna teletorn
2007年に消防基準への不適合で閉鎖された展望階は、2012年の改修で再開放された。2015年までの来場者は50万人を超え、2026年にも放送100周年の企画展が続く。
何をしたか
エストニア・タリンのテレビ塔(1980年開業。モスクワ五輪セーリング競技向けの建設計画の一環)は、2007年に展望階が消防基準への不適合を理由に一般公開を中止した。Eesti Arhitektuurikeskus(2019年)によれば、2009年にテレビ塔財団がコンペを実施しKOKO Architectsの案が1位に選ばれ、2012年に改修が完了した。改修前は来場者に開かれていたのが「レストラン階のみ」だったのに対し、新しい設計は塔を「多面的な娯楽・レジャーセンター」に変えることを狙ったと同記事は書いている。運営財団(teletorn.ee, 2025年)によれば、4月4日の再開時には新しい入口棟、北欧最高所の175m展望階、体験型の展示、レストランが加わった。
誰が始めたか
改修の発注者(クライアント)はTallinna Teletorni Sihtasutus(テレビ塔財団、法人名SA Tallinna Teletorn)である(Eesti Arhitektuurikeskus, 2019年)。ERR(2017年5月10日)は、この財団を「国有会社Leviraが管理するSA Tallinna Teletorn」と書いている。財団がどのような経緯で設立されたかは、参照した出典に書かれていない。
改修の設計は、2009年のコンペで1位となったKOKO Architectsが担った(Eesti Arhitektuurikeskus, 2019年)。同記事は、選定方式を構造化欄では「招待コンペ(Kutsutud võistlus)」、本文では「公開コンペ(avalik konkurss)」と2通りに表記しており、記述が一致しない。同記事は、KOKO Architectsの手によって塔が「ソ連時代の技術施設」から「モダンな来場者センター」に変わったと書いている。
いくらかかったか
改修にかかった費用は、参照した出典のどこにも書かれていない。unknown_fieldsにfunding_scaleを申告した。
分かるのは規模を示す数字のみである。Eesti Arhitektuurikeskus(2019年)は、改修後の延べ床面積を10,000平方メートルと書いている。同記事によれば、改修は2012年、エストニア文化基金(Eesti Kultuurkapital)の年間賞(Aastapreemia)を、同時期に改修されたレンナサダマ(水上飛行機格納庫)とあわせて受賞した。この賞は費用ではなく評価の記録だが、資金の出どころ(EU基金・国の予算等)については、参照した出典のどこにも記述がない。
真似するなら最低何が必要か
第一に、安全基準の不適合という後ろ向きの理由を、設計を選び直す機会に転換すること。展望階は消防基準に適合しなくなって閉鎖されたが、テレビ塔財団はそれを機にコンペを実施し、KOKO Architectsの新しい案を選んだ(Eesti Arhitektuurikeskus, 2019年)。
第二に、元に戻すのではなく、開放する範囲を広げること。Eesti Arhitektuurikeskus(2019年)によれば、改修前に来場者が入れたのは実質的にレストランのある階だけで、新しい設計はそれを多目的な娯楽・レジャー施設へと広げることを目指した(詳細は「何をしたか」参照)。
第三に、建物の来歴に沿った展示内容を持たせること。塔がもともと放送インフラであった来歴にもとづき、2026年の連続展示「Siin Tallinn! Sajand eetris」はエストニア放送100周年を記念して制作され、放送史をテーマにした展示が公開されている(kultuur.err.ee, 2026年3月31日・4月14日)。
第四に、収益を伴う共同利用の仕組みを組み込むこと。運営財団の公式サイト(2025年)は、172平方メートルの「Vitraažisaal」(ステンドグラスホール)を最大100人までのセミナー・会議・レセプション向けに貸し出していると書いている。
第五に、外部運営への委託には不確実性があることを見込んでおくこと。ERR(2017年5月10日)は、財団が前年秋にレストラン運営者との賃貸契約を打ち切った後、新しい運営者探しに難航したと報じている。限定入札に応じたのは2社のみで、選ばれた新規設立の企業は開店の約束を守れず、開業前に契約を打ち切られた。同記事は、財団の運営責任者Riina Roosipuu氏が、入札に応じたのが2社だけだったことと、選んだ企業の構想が塔に最も合っていたと判断した経緯を説明したと伝えている。
今どうなっているか
2026年8月時点で確認できたのは、2026年4月14日の記事までである。
塔は、放送インフラという来歴を軸にした企画展を続けている。ERR(2026年3月31日・4月14日)によれば、エストニア放送100周年を記念する連続展示「Siin Tallinn! Sajand eetris」の一環として、2026年にはラジオ産業初期の歴史を紹介する展示に続き、70年にわたる女性テレビ司会者を扱う「Telelegendide sajand. ETV teledaamid」と、著名なスポーツ実況者3人の私物・仕事道具を扱う「Kogutud hetked」が公開された。これらは放送博物館・ERR・エストニアスポーツ&オリンピック博物館・エストニア海事博物館等との協力で制作されたと同記事は書いている。
来場者数について、参照した出典で確認できる直近の数字は2017年5月時点の「年間16万人」である(ERR, 2017年5月10日)。それ以降の来場者数の推移は、参照した出典には書かれていない。
レストランの運営については、2017年時点で財団が新しい運営者を探している最中だったと報じられているが、その後どうなったかは参照した出典には書かれていない。
縮小・撤退・観光施設としての閉鎖を伝える記述は、参照した出典の中には無い。ただし、いずれの出典も、展望階そのものの安全性や維持管理体制の現況までは扱っていない。
出典
- Teletorni on taasavamisest külastanud üle poole miljoni inimese | Arhiiv | ERR — ERR(Eesti Rahvusringhääling)(2015-03-27)
- "Pealtnägija": Teletorn ei suuda suletud restoranile uut rentnikku leida | Majandus | ERR — ERR(Eesti Rahvusringhääling)(2017-05-10)
- Tallinna teletorni uus näitus viib Eesti raadioajaloo algusaegadesse | Muuseumid | ERR — ERR(Eesti Rahvusringhääling)(2026-03-31)
- Teletorni uutel näitustel näeb ETV teledaame ja legendaarseid spordireportereid | Muuseumid | ERR — ERR(Eesti Rahvusringhääling)(2026-04-14)
- Tallinna Teletorn — Eesti Arhitektuurikeskus — Eesti Arhitektuurikeskus(エストニア建築センター)(2019-08-01)
- History - Teletorn.ee — Tallinna Teletorn(公式サイト)(2025-04-16)
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