回線が来ない農村で住民が自分たちの通信網を敷き、共有物として開いた
guifi.net
2004年にオソナ郡で始まり、2006年11月に稼働ノードが1,000を超えた。2011年3月には財団が規制機関CMTを相手に提訴している。2026年3月時点で稼働ノード4万超、敷設した光ファイバー4万km超と報じられている。
何をしたか
カタルーニャ州オソナ郡の農村で2004年に始まった、住民が自分たちで敷く通信網。El Salto の2026年3月1日の記事は、商用の事業者が採算に合わないとして広帯域を提供しなかった地域で、共同体の応答が「回線をくれないなら自分たちで作る」だったと書いている。 2006年11月には稼働ノードが1,000を超え(VilaWeb 2006年11月5日)、2026年3月時点では稼働ノード4万超、敷設した光ファイバー4万km超とされる。仕組みの核は所有の形にある。基盤は集団の所有物で、開かれた相互接続の規則を守るかぎり誰でも接続・利用・拡張できる。 運営主体は企業でもNGOでもなく共有物を管理する財団で、地元の小さな事業者・協同組合・団体はその共有基盤の上で商用サービスを提供できる。2011年には、この形が制度と衝突して財団が規制機関を提訴している。
誰が始めたか
始めたのは十人ほどの住民である。 VilaWeb(2006年11月5日)は、guifi.net をインターネットと並行するもう一つの無線網だと説明する Lluís Dalmau を、2004年3月にこの事業を動かしはじめた一人として紹介し、同氏の話として当初は十人ほどだったが成功すると見込んでいたと書いている。elDiario.es(2016年11月10日)は、創設者の一人 Ramón Roca の話として、網を作る作業をしていた人は前からいたが、正式に始まったのは2004年であるとし、始まりは通信がほとんど届かず、届いても非常に高価だった農村部だった、要するに Telefónica に代わる基盤を作るという考えだったと書いている。El Salto(2026年3月1日)も、商用の事業者が採算に合わないとして広帯域を提供しなかったカタルーニャ州オソナ郡の農村で2004年に生まれたとしている。器としての Fundación guifi.net は後からできた。elDiario.es(2016年11月10日)は、2008年に、この取り組みが売られてしまわないようにするために推進者たちが財団を作ったと書いている。Público(2011年3月1日)は、この財団を利用者が同時に光ファイバーの所有者でもある網を展開している非営利の組織と書いている。なお El Salto の記事は、人工知能の研究者で Universidad Pontificia Comillas の教員である Eduardo C. Garrido-Merchán による論考であり、報道ではなく分析である。
いくらかかったか
総額は、参照した4本のどこにも書かれていない。 そのかわり4本は費用が誰の手に分散しているかを書いている。elDiario.es(2016年11月10日)によれば、基盤を伸ばすのは利用者自身で、通りごとに配線を延ばしていく。各住民が自宅の外側の配線とインターネットに入るのに要るものを自分で用意し、基盤そのものは共有物(procomún)に属する。装置を自分で組める人はそうし、組めない人のために協同組合・個人事業主・利用者の網などが作った30社ほどの専門の事業者が最初の接続を組み、サービスと保守に対して月額を取る。同記事は、これらの事業者がサービスに対して課金するのであって、基盤の支配に対してではないとし、Ramón Roca の言葉として、たとえば1ギガの接続が Telefónica の10分の1の価格になりうると書いている。無線の側の元手はさらに小さい。VilaWeb(2006年11月5日)は、免許の要らない自由な無線周波数を使うため、電話線も光ファイバーも要らずに接続できるとし、そのおかげで孤立した農家や一軒家が無理のない条件でつながると書いている。Telefónica のような大手が接続することも制度上は可能で、その場合は収入に応じて網の維持に拠出することだけが条件になる(elDiario.es 2016年11月10日)。財団の運営費、敷設した4万kmの光ファイバーの総投資額は、どの出典にも無い。 そのため funding_scale は unknown_fields に置いたままにしている。
真似するなら最低何が必要か
- 周りに人がいること。これが一番効く条件である。 elDiario.es(2016年11月10日)で Ramón Roca は、一人では自分の分を立ち上げられても、周りの人がついてこないと成り立たない、集団として起きることなのだと述べている。同氏によれば集団が成熟している場所ほど可能性が高く、自宅から半径100メートルにアンテナがある状態も起こりうる一方、バルセロナ市内はノードの密度がそれほど高くなく、緯度の違う場所へ行けば隣人をつなぐのに何キロも走らねばならない。同記事は、隣人が一度引くと次の人が引きやすくなるという毛細管的な広がり方を guifi.net の特徴としている。
- 免許の要らない周波数と、中心のない網の設計。 VilaWeb(2006年11月5日)は、利用者どうしが中央のサーバーを持たないメッシュ状の網で無線接続し、免許の要らない自由な無線周波数で他のノードから信号を受けると書いている。設定の仕方は guifi.net のサイトに置かれ、望む者は誰でも参加して運営に貢献できる。
- 接続を代行して月額を取る事業者が周りにいること。 上記のとおり、2016年の時点で30社ほどが設置と保守を担っていた。elDiario.es は、サイトに一覧はあるが閉じた名簿ではなく、登録したい事業者はすべて招かれていると書いている。組める人と組めない人の両方を受け止める層がないと、網は技術者の趣味に留まる。
- 売られない器。 elDiario.es(2016年11月10日)は、2008年に財団を作った理由が、この取り組みが売られてしまわないようにするためだったと明記している。財団は非営利で、そこから網を運営し、利用者を過程で支えようとする。El Salto(2026年3月1日)は、基盤は集団の所有で、開かれた相互接続の基本的な規則を守るかぎり誰でも接続・利用・拡張できるとし、この形を公道の上をいろいろな運送業者が走るようなものだと説明している。
- 技術の決まりを誰かが定めること。 同じ elDiario.es で Ramón Roca は、誰でも自由に接続できるが「どんなやり方でも」ではないとし、財団が必要な技術のパラメータを定めると述べている。光ファイバーは点と点をつなぐもので途中で切れないため、接続には技術が要るとも同氏は述べている。
- 制度と衝突する覚悟。 Público(2011年3月1日)によれば、CMT(電気通信市場委員会)が前年夏に出した通達は、行政が自ら網を敷く条件を事業として計画を持ち、公金に頼らず、無料なら広告か協賛で支えることと定めた。これが自治体の WiFi には道を開いた一方、guifi.net のような取り組みには閉じた。Roca は、通達を読んだ自治体が自分たちを違法だと思い込むようになったと述べ、当時 guifi.net に協力していたおよそ50の自治体が奇妙な法的状況に置かれたとされる。財団は通達の取り消しと執行停止を求めて全国管区裁判所に提訴し、欧州の指令に反するとして先決問題も立てた。つまりこの形は、既存の通信規制と正面から当たる。
今どうなっているか
2026年8月の時点で確認できた最も新しい記録は、2026年3月1日の El Salto である。 同記事は、guifi.net が4万を超える稼働ノードと4万kmを超える敷設光ファイバーを持ち、世界最大の住民運営の通信網だとしている。同記事によれば、家庭・企業・行政に接続を提供し、網の共有物としての原則のもとで運営される。数の推移を出典に沿って並べると、2006年11月に稼働ノード1,053・カバー距離1,000km超(VilaWeb。記事はノード数を数字ではなく綴りで書いている)、2011年3月にノードとして機能する世帯12,000超・網18,000km・およそ100の自治体(Público)、2016年11月に登録ノード51,579・うち稼働32,339、毎月およそ300のノードが新設され、利用者はおよそ10万人(elDiario.es)、そして2026年3月に稼働4万超(El Salto)となる。2011年に財団が起こした CMT に対する訴訟がどうなったかを書いた出典は無い。El Salto の記事は guifi.net を主題にしたものではなく、Linux・Wikipedia・Decidim・Som Energia と並べて共有物として運営される技術基盤の5例の一つとして扱っており、この記録が引ける2026年時点の記述はその範囲に限られる。
出典
- La xarxa sense fils Guifi.net supera els mil nodes en funcionament — VilaWeb(2006-11-05)
- Guifi.net demanda a la CMT por frenar las redes abiertas — Público(2011-03-01)
- Guifinet: wifi y fibra óptica libre — elDiario.es(Alternativas Económicas)(2016-11-10)
- Comunes digitales y soberanía tecnológica: las alternativas que ya funcionan — El Salto(2026-03-01)
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