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住民が決める自然・緑地・水辺25万超

洪水と汚水が混ざる非公式集住地で、人工湿地と通路のかさ上げを住民と一緒に設計した

Revitalising Informal Settlements and their Environments

インドネシア / 南スラウェシ州 / マカッサル市(バトゥア/ウンティア/タロ/バロンボン/ボノレンガ/カルク・ボドア)

洪水と汚水が混ざる非公式集住地で、人工湿地と通路のかさ上げを住民と一緒に設計した
© CRC for Water Sensitive Cities — この写真が載っている記事

2017年8月に始まり、2019年にバトゥア地区が最初に完成した。2019年の出典は2022年7月に終わる予定と書いていたが、2026年6月の時点では6地区が完成し、次の6地区の準備が進んでいると報じられている。

何をしたか

インドネシア・マカッサル市の非公式集住地(permukiman informal)で、汚水と洪水の水が混ざる状態を、集落の屋外の水の道をつくり替えることで断とうとした取り組み。豪モナシュ大学が主導し、マカッサル市政府とハサヌディン大学が加わっている。2017年8月に始まった(CRC for Water Sensitive Cities 2019年11月6日)。

入れたのは、人工湿地・生物濾過の庭・雨水の貯留、そして建物と屋外に置く「スマートな」新しい浄化槽にもとづく地区単位の衛生システムを組み合わせたものである(同)。加えて排水の改修と、通路のかさ上げを行った。World Resources Institute(2026年4月8日)はこの組み方を分散化と書いている。

設計は住民と一緒に行う形をとっている。 2022年9月1日の起工式では、改修は住民と共同で設計されると市長が説明している(Tribun Timur 2022年9月1日)。

World Resources Institute(2026年4月8日)によれば、6地区で1,400人超が直接の対象になり、およそ6,000人が間接的な改善を受けている。

誰が始めたか

主導しているのは豪モナシュ大学である。 事業は同大の持続可能開発研究所が率いる海外の研究チームによるもので、CRC for Water Sensitive Cities は自らを「知識のパートナー」として、技術設計・住民との共同設計・詳細設計・施工に関わったと書いている(2019年11月6日)。

資金はオーストラリア政府から出ている。 Tribun Timur(2022年9月1日)によれば、これはオーストラリア政府とインドネシア政府の間の助成事業で、オーストラリア外務貿易省(DFAT)の資金により、インフラのためのインドネシア・オーストラリア協力(KIAT)を通じて行われている。実施にはモナシュ大学、公共事業・国民住宅省(PUPR)、ハサヌディン大学が関わる。

現地の研究はハサヌディン大学が担う。 同大のパートナーシップ担当ディレクター、アンサリヤディは、非公式集住地の水と衛生に「Water Sensitive City」の新しい手法を試す研究に大学が直接関わっていること、家庭からの排水を自然に濾してから環境へ戻すスマート浄化槽の技術がこの研究で導入されたことを述べている(Tribun Timur 2022年9月1日)。同氏によれば、この研究には6か国・18機関・11の学問分野の研究者が加わっている。

市の側の言葉も出典に残っている。 起工式でマカッサル市長ダニー・ポマントは、非公式集住地に住む人の水と衛生へのアクセスと気候への耐性を高めることが目的だと述べ、300を超える世帯が対象になるとしている(Tribun Timur 2022年9月1日)。

いくらかかったか

総事業費の金額は、参照した7本のどこにも書かれていない。 1地区あたりの費用も、住民負担の有無も書かれていない。規模については CRC for Water Sensitive Cities(2019年11月6日)が数百万ドル規模の事業だと書いているだけである。unknown_fieldsfunding_scale を申告した。

分かっているのは資金の出どころだけである。 オーストラリア外務貿易省(DFAT)の資金で、KIAT を通じて実施されている(Tribun Timur 2022年9月1日)。2026年6月の時点で完成した6地区は、オーストラリア政府の支援によるものとされる(Abata News 2026年6月23日)。

物の量は分かる。 World Resources Institute(2026年4月8日)によれば、数百のトイレが設置されて地区の衛生システムに接続され、かさ上げした通路はおよそ3,000平方メートルに達している。

真似するなら最低何が必要か

第一に、立ち退かせないことを前提に置くこと。World Resources Institute(2026年4月8日)は、この事業の中心にある考えを、こうした何世代も続く集落を、除去や移転の対象となる問題ではなく、インフラの革新が起きる場所とみなすことだと書いている。同記事は、社会関係・生業・日々の習慣を乱さずに地区を残しながらそれを行っているとも書いている。

第二に、汚れた水がどこを通って人に届くかを先に特定すること。2019年の式典で、海外の研究チームの代表として出席したトニー・ウォン教授は、この手法の中心は廃棄物の流れから生じる糞便汚染の経路への曝露を減らすことにあると述べている(CRC for Water Sensitive Cities 2019年11月6日)。汚水処理と雨水排水を別々に直すのではなく、両者が混ざる地点を止める設計になっている。

第三に、衛生設備を住民が集まる場所と兼用にすること。RISE 共同ディレクターでモナシュ大学教授のディエゴ・ラミレス・ロベリングは「地域の生活の場にもなるインフラを設計した」と述べている(World Resources Institute 2026年4月8日)。人工湿地は植栽のある広場を兼ね、かさ上げした通路は洪水対策と共同の場所を兼ねている。

第四に、分散型でつくること。World Resources Institute(2026年4月8日)は、地区ごとの人工湿地、加圧式の下水、蓋のある共同浄化槽によって衛生システムを分散化したと書いている。マカッサル市長ダニー・ポマントは、この改修が都市の在来のインフラでは届きにくい地域の数百世帯に向けたものだと述べている(Tribun Timur 2022年9月1日)。

第五に、先に1地区つくって見せること。バトゥア地区は手法を示すための実演地区として選ばれ、2019年10月19日に最初に完成した(CRC for Water Sensitive Cities 2019年11月6日)。5つの町へ広げる起工式はその約3年後の2022年9月である。

第六に、「住民と一緒に設計した」を後から測ること。2025年6月13日に PLOS Global Public Health に載った過程評価は、マカッサルで320件、スバで503件の調査をもとに、誰が参加し誰が満足したかを統計で調べている。参加したと答えた人はマカッサルで89%だが、参加するかどうかを分ける要因として性別・年齢・婚姻状況が統計上有意に出た。 意思決定への影響力に満足した人は66%である。同じ論文は「一部の住民は RISE への不信と、地域の代表者によって活動から排除されたと感じたことを述べた」とも書いている。

今どうなっているか

2026年8月時点で確認できたのは、2026年6月23日の記事までである。

終わる予定だった時期を過ぎて続いている。 CRC for Water Sensitive Cities(2019年11月6日)は、この事業が2017年8月に始まり2022年7月に終わる予定だと書いていた。Abata News(2026年6月23日)は、9年にわたる実施として書き、バトゥア・ボノレンガ・バロンボン・ウンティア・タロ・カルク・ボドアの6地区が完成し、次の6地区の準備が進んでいると伝えている。

州への拡大が話し合われている。 同記事によれば、2026年6月22日に南スラウェシ州副知事ファトマワティ・ルスディが、豪総領事トッド・ディアスとモナシュ大学のチームと、事業を州内の他の地域へ広げる計画を話し合った。

国際的な選定に入っている。 Abata News(2026年6月23日)によれば、マカッサルは WRI Ross Center Prize for Cities で世界の5本に入り、2026年4月にニューヨークで発表された。選考には世界のおよそ300都市が関わったとされる。同じ賞について World Resources Institute(2026年4月8日)は、5件の最終候補の1つに選ばれたと書いている。順位のように書いているのは Abata News の側である。

指摘への応答は、指摘した論文の中にある。 2025年6月の過程評価は、参加と影響力に性別と社会的な不平等が見られたとしたうえで、水と衛生の事業は地域住民や地元組織との関わりの質を振り返るべきだと勧めている。この論文の著者には RISE の関係者が名を連ねている。 参照した7本の中に、これとは別に事業者側が反論した記述は無い。

出典

  1. RISE milestone reached in Makassar — CRC for Water Sensitive Cities(2019-11-06)
  2. Collaborating With Communities: Citizen Science Flood Monitoring in Urban Informal Settlements — Urban Planning(2021-12-16)
  3. Program RISE Australia-Indonesia, Sulap Makassar Jadi Kota Zero Kumuh — Tribun Timur(2022-09-01)
  4. Berikut 5 Titik Pencanangan Program RISE di Makassar — Tribun Timur(2022-09-01)
  5. Who participates in ‘participatory design’ of WASH infrastructure: A mixed-methods process evaluation — PLOS Global Public Health(2025-06-13)
  6. In Indonesia, Community-Led Design Improves Water and Sanitation — World Resources Institute(2026-04-08)
  7. Dinilai Berhasil di Makassar, Program RISE Disiapkan Diperluas ke Daerah Lain di Sulsel — Abata News(2026-06-23)

最終確認日 2026-08-19

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