町なかの旧修道院を、高齢者が独りで暮らせる住まいと文化の場に変えた
McAuley Place
2024年12月の Kildare Nationalist は、地元選出の議員の話として、隣接地を買って最大45戸を足す計画があると伝えている。同紙は県議会が2025年に手続きを進める見込みだと書き、設計費に地方財産税から10万ユーロが充てられたとも書いている。
何をしたか
アイルランド・キルデア県ナースの町なかにあった旧修道院を買い取り、高齢者が独りで暮らせる集合住宅と、芸術・地域の場を同じ敷地に入れた。Kildare Nationalist は2024年に、2000年1月にナースに住む専門職の一団が、自宅で自立して暮らせなくなったが看護が要るほどではない場合にどこで暮らしたいかを考えて集まったのが始まりだと書いている。Irish Times は2013年に、一団が Sallins Road の旧修道院を買い、寄付集めと政府の助成で、元の建物と裏手の新しい棟に53戸を整えたと報じている。同記事によれば、65歳以上の入居費は週95ユーロで、ナースの出身者や地域に戻ってきた人が優先される。建物の中に医師も看護師も置かないが、町の中心にあるため医療にはすぐかかれる、と、一団の一人である Margharita Solan は説明している。
誰が始めたか
始めたのは、行政でも事業者でもなく、自分の老後を考えた住民の一団である。 Kildare Nationalist(2024年12月31日)は、2000年1月に、ナースに住み自分たちの加齢を意識していた専門職の一団が集まり、自宅で自立して暮らせなくなったが完全な看護は要らないという段になったときに、自分ならどんな環境を選ぶかを考えたと書いている。同紙によれば、一団は3〜4寝室の家と庭は手に負えなくなるが、町の中心にある1寝室の住戸なら十分にやっていけると判断し、高齢者向けの施設収容型の介護に代わるもの、そしてすべての年齢のための社会をつくる型を育てることに自らを縛った。これが McAuley Place になった。
Irish Times(2013年6月18日)は同じ始まりを、1つの問いとして書いている。 「自分はどんな場所で老いたいか」——これを12年前にナース在住の専門職の一団とともに自らに問うたのが Margharita Solan だとし、同氏が長く看護師として働き、当時はこの拠点で全日を無償で働いていたと書いている。組織の名は当初 Nás ni Ríogh Housing Association で、のちに McAuley Place になったとも書かれている。
外からの評価が付いたのも早い。 Kildare Nationalist は、2012年6月に訪れたマイケル・D・ヒギンズ大統領が、McAuley Place は「should be used as an exemplar nationwide」(全国の手本として用いられるべきだ)と述べたと書いている。
いくらかかったか
整備にかかった総額は、参照した3本のどこにも書かれていない。 出ているのは、資金の出どころと、住む側が払う額と、後年の一部の補助である。
- 買って直すところ——Irish Times(2013年6月18日)は、一団が Sallins Road の旧修道院を買い、寄付集めと政府の助成によって元の建物と裏手の新しい棟に53戸を整えたと書いている。金額は無い
- 住む側の負担——同記事によれば、65歳以上の入居費は週95ユーロである。住戸には設備の整った台所と手を加えた浴室が付き、寝室と居間の家具は入居者が自分で持ち込む。 TheJournal.ie(2019年1月19日)は、53戸が社会住宅と自費入居に分かれて使われていると書いている
- 人手——Irish Times は、ここで働く人の多くが無償の有志であること、入居者の何人かが芝を刈り、喫茶を手伝うなど自発的に働いていることを書いている
- やり残した部分の資金——2013年の時点で Solan は、敷地内の19世紀の石造りの建物を直して学びの拠点にする次の計画について、必要な資金の75%の確保が暫定的に合意されていると説明している
- 後年の公費——Kildare Nationalist(2024年12月31日)は、地元の議員たちが設計を助けるために地方財産税から10万ユーロを充て、寄付集めが続いていると書いている。同紙が引く地元選出の議員によれば、増設する最大45戸について住宅を所管する省庁の承認が出ている
真似するなら最低何が必要か
1. 当事者が自分のために設計すること。 出発点は「高齢者をどうするか」ではなく「自分はどこで老いたいか」だった。Kildare Nationalist は、集まった一団が自分たちの加齢を意識していた専門職だったと書いている。Solan は Irish Times に、McAuley Place の狙いは高齢者を活気ある地域の中心に連れてくることで、焦点は高齢者ではなく地域の側にあると述べている
2. 町の中心の建物を買うこと。 対象は Sallins Road の町側の端にあった旧修道院である。Kildare Nationalist が引く議員は、店も教会も酒場もすぐ隣にあると述べている。Irish Times は、建物が町の中心にあるので医療にはいつでもすぐかかれると Solan の説明として書き、住戸の裏手には中等学校と小学校があって一日じゅう子どもの声がすると書いている
3. 建物の中に医療を置かないと決めること。 Solan は Irish Times に、老いは病気ではないので敷地内に医師も看護師も置いていないと述べている。同氏はさらに、環境を先回りして弱くしていくと施設収容型の介護へ早く備えさせてしまう危険があるとして、高齢者の生活には「よい負荷」が要ると述べている
4. 住まいだけを作らないこと。 Solan は、芸術の場と地域の場を同じ開発に組み込んだことが中心的に重要だったと述べている。TheJournal.ie は、喫茶室・芸術と文化の場・工房・教室が入居者だけでなくナースの町全体に開かれていると書いている。Irish Times は、地元の絵画の集まりが玄関ホールで作品を並べて売り、手芸の教室で作られた品が受付で売られていること、5歳から86歳までの50人がフェルトの室内履きを作る1年がかりの企画が、世代をまたぐ創作についての国際的な集まりにつながったことを書いている
5. 払える人と払えない人を同じ建物に混ぜること。 53戸は社会住宅と自費入居に分かれる(TheJournal.ie)。入居費は65歳以上で週95ユーロ、ナースの出身者や地域に戻ってきた人が優先される(Irish Times)
6. 無償の働き手を前提に置くこと。 働く人の多くが有志で、始めた本人も全日を無償で働いていた(Irish Times)。ただしこれは費用の記録が残らないということでもある——3本のどこにも運営の年間費用が出てこないのは、この構造と無関係ではない
確認できないものは、整備と運営にかかった総額、戸数の食い違い(2013年と2019年の記事は53戸と書き、2024年に議員は「80から120〜130へ」と述べている)、入居を待っている人の数、2013年に挙がっていた学びの拠点がその後どうなったか、そして2025年の手続きが実際に進んだかである。
今どうなっているか
2026年8月時点で確認できた最も新しい記録は、2024年12月31日の Kildare Nationalist の記事である。
同紙によれば、キルデア県議会が早い時期に建築の手続きに入る見込みだとされ、ナース市域の議員会での質問に対して県の住宅部門は、提案はまだ事前協議の段階だが、2025年の第1四半期に Part 8 の手続きを始め、第3四半期に議員へ諮る見込みだと答えている。
地元選出の議員は同紙に、McAuley Place の隣の土地を民間の住宅会社から買ったこと、45戸を計画して住宅の省庁の承認が出ていることを述べ、第1〜第2四半期に手続きが来ることを期待すると語っている。同氏はこれによって戸数が80から最大120〜130になるとし、独りで暮らせないが介護施設には入りたくない高齢者にとって欧州で先を行く例だと述べている。
ただしこれらはすべて2024年末時点の見込みである。 2025年に Part 8 が実際に出されたか、承認されたか、着工したかを書いた出典は無い。同紙は、設計を助けるために地方財産税から10万ユーロが充てられ、寄付集めが続いていると書くところまでである。
2013年に語られていたもう1つの計画——敷地内の19世紀の石造りの建物を直して、織り・生け花・籠づくり・木工の教室を置く学びの拠点——についても、その後を伝える記述は3本のどこにも無い。
出典
- Is this the kind of place I would like to grow old in? — The Irish Times(2013-06-18)
- A place to grow old where you're 'never short of company' — TheJournal.ie(2019-01-19)
- Kildare aged care facility set for big 2025 — Kildare Nationalist(2024-12-31)
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