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買う資材をやめて牛糞と尿で作る農法に、州ぐるみで小農を移していった

Andhra Pradesh Community Managed Natural Farming

インド / アーンドラ・プラデーシュ州 / 州全域(出典に出る郡はアナンタプル・カダパ・クリシュナ・ネッルール・プラカサム・ヴィシャーカパトナム)

買う資材をやめて牛糞と尿で作る農法に、州ぐるみで小農を移していった
© Scroll.in — この写真が載っている記事

開始年は出典間で2016年と2018年に分かれる。2018年9月時点では3,015村・35万の農家で、2023年には州の6郡での比較試験の論文が報じられ、2024年8月時点で100万を超える農家・50万ヘクタールに達したとされる。

何をしたか

インド・アーンドラ・プラデーシュ州で、買ってくる資材をやめ、手元の牛の糞と尿とマルチで作る農法へ、小農を州ぐるみで移していった取り組み。Fundação Calouste Gulbenkian(2024年8月2日)によれば、これは女性が大半を占める小農を、化学資材に頼る農業から「自然農法」へ移すための州全域の事業で、2016年に州政府が、農業の経済的な苦境と気候変動による農家の困窮への対応として立ち上げた。

やり方は資材の置き換えである。 Down To Earth(2023年4月11日)によれば、この農法は化学の肥料も農薬も使わず、在来牛の糞と尿を使った手作りの資材とマルチだけを用い、資材の購入を伴わない。 有機農法との違いもそこにあり、有機農法は化学資材を使わないものの、厩肥やミミズ堆肥といった買ってくる有機資材を用いる(同)。

規模は州の農家全体を狙っている。 Scroll.in(2019年2月13日)によれば、州は12,494のグラム・パンチャーヤト(村落自治体)にまたがる、大半が小農・零細農である600万の農家に働きかける必要がある。州の耕地800万ヘクタールすべてを対象にするという目標が置かれていた。

2024年8月時点で100万を超える農家・50万ヘクタールに達し、インドの他州と他の南側の国へも広がっているとされる(Fundação Calouste Gulbenkian 2024年8月2日)。

誰が始めたか

立ち上げたのは州政府である(Fundação Calouste Gulbenkian 2024年8月2日)。実施を担うのは Rythu Sadhikara Samstha(農民エンパワメント公社)で、Down To Earth(2023年4月11日)はこれを州政府が2014年に設けた非営利組織と書いている。

名称が途中で変わっている。 Scroll.in(2019年2月13日)が扱っているのは Andhra Pradesh Climate Resilient Zero Budget Natural Farming という名の事業で、3年・700村の試行を経て2018年6月に始まったとされる。 一方 Down To Earth(2023年4月11日)と Fundação Calouste Gulbenkian(2024年8月2日)は、Andhra Pradesh Community Managed Natural Farming が2016年に始まったと書いている。開始年が出典間で食い違うので discrepancies に並置した。

事業を率いる側の言葉が出典に残っている。 Scroll.in(2019年2月13日)は、この事業を率いる州政府の農業顧問 T・ヴィジャイ・クマール氏が、農家の福祉・消費者の健康・環境の保護という、社会への戻りがとても大きい事業だと述べたと伝えている。

背景に農薬の使用量がある。 同記事によれば、テランガーナ州が分かれる前の2011〜12年、アーンドラ・プラデーシュは量で見てインドで最も農薬を使う州だった。

いくらかかったか

総事業費は、参照した4本のどこにも書かれていない。

州全体に広げる費用の見積もりは出ている。 Scroll.in(2019年2月13日)は、この事業を州全域に広げるには1,700億ルピー(出典の表記は Rs 17,000 crore)が要ると書いている。

農家の側の費用は下がるとされている。 同記事は、カダパ郡で4年にわたりこの農法を続けている農家の例として、伝統的な種を使い、化学肥料と農薬を家畜の排せつ物や地元で手に入る材料から作ったものに置き換えたことで、市場への依存が減り、栽培にかかる費用が下がったと伝えている。 同じ農家によれば、菊の収量は1エーカーあたり4〜4.5トンから6〜7トンに上がり、花の日持ちは1日から3日になり、重量が増えたぶん手取りも上がった。この農家の名は、一般の参加者にあたるため記さない。

真似するなら最低何が必要か

第一に、買う資材をやめることを制度の芯に置くこと。この農法は在来牛の糞と尿を使った手作りの資材とマルチだけを用い、資材の購入を伴わない(Down To Earth 2023年4月11日)。有機農法との違いは「化学かどうか」ではなく「買うかどうか」である。

第二に、先に小さく長く試すこと。Scroll.in(2019年2月13日)によれば、州の事業として始まる前に3年・700村の試行が置かれていた。

第三に、実施する組織を別に立てること。実施は州が2014年に設けた非営利組織 Rythu Sadhikara Samstha が担っている(Down To Earth 2023年4月11日)。州の部局がそのまま実施するのではない。

第四に、比べる試験を外部と組んで回すこと。Down To Earth(2023年4月11日)によれば、英国レディング大学と Rythu Sadhikara Samstha の研究者が、州内6郡・28農場・3作期にわたる圃場試験で、この農法・有機農法・慣行農法を収量、土壌の pH、地温、含水率、養分、ミミズの数で比べた。自分の事業を、外部の大学と一緒に測る形にしている。

第五に、単位当たりの規模を先に見積もること。Scroll.in(2019年2月13日)は、州の12,494のグラム・パンチャーヤトにまたがる600万の農家に働きかける必要があり、州全体では1,700億ルピーが要ると書いている。対象の数と金額が最初から示されている。

今どうなっているか

2026年8月時点で確認できたのは、2024年8月2日の記事までである。

広がりは段階的に報じられている。 Scroll.in(2019年2月13日)は、政府文書として2018年9月時点で3,015村・35万の農家が実践していたと書いている。Down To Earth(2023年4月11日)は、州のおよそ600万の農家のうち63万の農家と働いてきたとする。Fundação Calouste Gulbenkian(2024年8月2日)は100万を超える農家・50万ヘクタールとしている。

収量については比較試験の結果が報じられている。 Down To Earth(2023年4月11日)によれば、2023年3月23日に Agronomy for Sustainable Development 誌に載った論文は、慣行農法と比べたとき有機農法では収量が保たれ、この農法では上がったとし、落花生の子実収量はこの農法で30〜40%高かったと報告している。同記事は、化学肥料を使う慣行農法の方が抽出可能な養分の濃度が高くなるという主張があったが、この農法でも養分の利用可能性は損なわれていなかったとも書いている。試験は2019年6月から2020年にかけて、800キロメートルにわたる6郡の28農場で行われた。

規模の拡大そのものには当初から問いが向けられていた。 Scroll.in の2019年2月13日の記事は見出しで、費用を下げ収量を上げているが「規模を広げられるのか」と問うている。同記事は、州が農薬を最も使う州だったこと、農業の大半がいまも化学資材に頼っていること、そして600万の農家の一つひとつを説得し移行を助けなければならないことを、事業が現場で抱える大きな困難として挙げている。参照した4本の中に、この問いに事業者側が答えた記述は無い。 ただし2024年8月時点の100万を超える農家という数字は、2018年9月の35万の農家から増えている。

外へ出ている。 Fundação Calouste Gulbenkian(2024年8月2日)は、この事業がインドの他州と他の南側の国々へより広く展開されつつあると書き、2024年の Gulbenkian Prize for Humanity の共同受賞者の一つとして紹介している。

出典

  1. Andhra Pradesh: Natural Farming enables farmers to cut costs and improve yields but is it scalable? — Scroll.in(2019-02-13)
  2. Not just green: Natural farming in Andhra yielded more produce than conventional methods, shows study — Down To Earth(2023-04-11)
  3. Community-based natural farming outshines other farming practices in Andhra Pradesh — Mongabay India(2023-07-31)
  4. Andhra Pradesh Community Managed Natural Farming — Fundação Calouste Gulbenkian(2024-08-02)

最終確認日 2026-08-19

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