官民12者が出資した会社が空き店舗に店を入れ、105店舗が出たが1店舗あたりの売上は目標に届かなかった
大分まちなか倶楽部
設立は平成19年5月で、出典は2013年から2026年にわたる。2017年の市の計画が新規出店105店舗と1店舗あたりの売上の未達を並べて書いており、2021年と2026年の出典では同社が広場の運営と補助の相談窓口に置かれている。
何をしたか
大分市の中心市街地で、市・商工会議所・新聞社・百貨店・銀行など12者が出資したまちづくり会社が、商店街の空き店舗にテナントを入れた。 大分市の第2期中心市街地活性化基本計画によれば、平成24年6月時点で延べ105店舗が新規出店した。 その一方で同計画は、1店舗あたりの売上が当初の目標を大きく下回ったことも書いている。 同計画は、竹町通商店街と中央町商店街が飲食店の割合をやや増やすという方針を打ち出したことが功を奏したとする一方、方針が明確でなかった府内町側では効果が出にくかったとしている。
誰が始めたか
会社は官民が一体で出資してできている。株主表が公になっているので、そのまま写す。
大分市の第2期中心市街地活性化基本計画によれば、株式会社大分まちなか倶楽部は平成19年5月に設立された。 同計画は、大分商工会議所とともに法定協議会を共同で設立する立場に立つための会社であり、官民が一体になった形だと書いている。 同計画に載る概要では、設立は平成19年5月14日、資本金は10,500,000円(発行株式数525、一口20,000円)である。出典は和暦でしか書いていないので、本文は和暦のまま写した(start_year は並べ替えのためのメタデータなので、平成19年にあたる2007を入れている)。
株主は12者である。 同計画の表によれば、大分市と大分商工会議所がそれぞれ100株・19.05%で発起人、大分合同新聞社が75株・14.29%、株式会社トキハが50株・9.53%、以下、デジタルバンク株式会社・株式会社大分銀行・株式会社豊和銀行・大分信用金庫・大分県信用組合・大分市中心部商店街振興組合・大分都心まちづくり委員会・株式会社JR大分シティが各25株・4.76%で、合計525株である。
この株主表は、本レコードの出典の読み方を決める。 大分市は出資者なので、市の出典3本は出資者の書いたものである。大分合同新聞社も出資者なので、同紙も独立した媒体として扱えない。 独立した一次情報として数えたのは、学術1系統(著者が重なり主題名も同じ2本を合わせて1本)と大分経済新聞2本である。
テナントミックス事業が効いた時期については、同計画がこう書いている。 中央町側の商店街は平成19年以前、昔からの物販店にまじって空き店舗が散見される状態で、歩行者の通行量も減る方向にあった。同計画は、第1期大分市中心市街地活性化基本計画が平成20年に認定されたのを契機として、竹町通商店街と中央町商店街が、賑わいをつくるために飲食店の割合を若干増やすという商店街の方針を明確に打ち出し、それが功を奏したとしている。方針を打ち出したのは商店街の側であり、会社が決めたとは書かれていない。
学術の側からは、2013年に研究の対象になっている。 日本建築学会関東支部研究報告集(2013年3月)と都市計画(2013年8月30日)は、いずれも「まちづくり会社による中心商店街の『テナントマネジメント』に関する研究」の題で同社を扱っている。著者が重なり主題名も同じなので、独立した一次情報としては合わせて1本と数えた(「その1」と付いているのは都市計画の側だけである)。 書誌ページしか読めていないため、内容には立ち入らない。
市が公的な位置づけを与えたのは、設立よりあとである。設立は平成19年、指定は令和4年にあたる。 大分市は、令和4年5月12日に株式会社大分まちなか倶楽部を都市再生推進法人に指定したと掲載している。同市のページによれば、指定された法人が行うのは都市再生特別措置法の第119条が定める業務で、その一部だけでもよいとされている。同市のページによれば、審査の基準には、申請者かその母体となる組織が直近5年のうちにまちづくりの活動をした実績を持つこと、市内に事務所を置き、市内でまちづくりの活動をしていること、業務に必要な組織と人員を備え、経費を賄うだけの経済的な基礎があることなどが並ぶ。
いくらかかったか
会社の売上と収支は、今回の出典のどれにも書かれていない。 分かるのは、資本金と株主構成、市の補助制度の枠、会社が運営を受託した仮設店舗の出店料、そして事業の目標と実績の乖離である。
資本金は10,500,000円である(前節の株主表と同じ出典)。
市の補助制度の枠は、2026年のページにある。 大分市の中心市街地商都復活支援事業のうち、まちなか出店支援事業は補助率2分の1で、補助限度額が商店街団体150万円・法人または個人100万円である。イベント開催事業は補助率3分の2で、令和8年度から商店街団体80万円・事業者60万円になった。広域連携イベント誘致事業は補助率3分の2・60万円で、この2つは令和8年度から申請が1年度あたり1回に変わった。 商店街基盤整備事業は補助率2分の1・1,000万円である。同市はこの手続きの最初と途中に同社を置いており、出店場所・業種やイベントの内容の相談も、申請書の添付書類の内容確認も同社で行うとしている(まちなか出店支援事業だけは、事業計画書をいったん大分商工会議所へ出して直す段が挟まる)。
仮設店舗の値づけは、2021年の記事にある。 大分経済新聞(2021年10月21日)によれば、大分市が広場に置く仮設店舗は、消費税と水道光熱費を含めて7日間2万5,000円で貸し出すとされていた。1区画は約32平方メートルで、その内訳は建物が約12平方メートル、テラスが約20平方メートルとされている。
目標と実績の差は、市の計画が並べて書いている。 同計画によれば、1店舗あたりの売り上げ目標は当初計画で69.6百万円と置かれていたが、売上の実績は20百万円だった。同計画は、本事業での売上の積算が目標を大きく下回っているとし、第2期では積算上の売り上げ目標を見直す必要があるとしている。同計画は別の箇所で、この開きなどを理由に、小売業年間商品販売額の目標値を大きく下回っていると推察される、という書き方もしている。
真似するなら最低何が必要か
出典から取り出せるのは5つである。
1. 商店街の側に業種の方針を出させること。 前節のとおり、大分市の計画は、竹町通商店街と中央町商店街が飲食店の割合をやや増やすという方針を明確に打ち出したことが功を奏したと書いている。逆に、活性化の方針が明確にされていなかった府内町側の商店街では、同社が進めるテナントミックスによる空き店舗対策の効果がなかなか発揮できていないとも書いている。同計画は、方針が固まっていないところについては、商店街ごとの再生の方針を明確に示したうえで同社がテナントミックスの事業を進めることが必要だと考えている、と書いている
2. 入れて終わりにしないこと。 同計画によれば、平成24年6月現在で、補助を使わなかったものも含めて延べ105店舗が新規出店した。同計画は、店の配置を組み立てたことと経営のフォローアップが、新規事業者の継続的な運営を支えているとしている(主体は書かれていない)
3. 落ちるほうの数字も並べておくこと。 前節のとおり、1店舗あたりの売上目標69.6百万円に対し実績は20百万円だった。同計画は積算の見直しが要るとしている。成果(105店舗)と未達(売上)が同じ文書に並んでいる
4. 大型店の撤退が数字を持っていくことを織り込むこと。 同計画によれば、旧大分サティが撤退した際は周辺の歩行者通行量が58%減り(平成20年18,501人→平成21年7,798人)、平成22年10月に、1階に総合食料品スーパーを入れたセントポルタビルへ再生されて回復した(15,462人)。一方、平成23年1月の大分パルコの撤退では周辺の通行量が約62%減った。同計画は、平成18年から平成23年で中心部全体が11%の減少、府内町側の商店街が14%の減少、中央町側の商店街が4%の減少だったとしたうえで、テナントを誘致する方針がはっきりしていて、テナントミックスが順調だった商店街では、落ち込みが小さかったと書いている
5. 稼ぎ口を、あとから足せる形にしておくこと。 大分経済新聞(2018年12月28日)によれば、中心部にある商店街5つと大型商業施設2つが手を組む共同催事は、2015年に新しい駅ビルが開業したのを機に、夏と冬の年2回続いており、この催事を主催しているのは大分都心まちづくり委員会で、その事務局を同社が務めている。 同紙(2021年10月21日)によれば、同社は大分市が広場に置く仮設店舗の運営も委託されている
確認できないのは、会社の売上と収支、テナントミックスで誘致した店の生存率、平成24年6月より後の新規出店数、そして平成24年より後の歩行者通行量の実績である(同計画に載る平成29年の値は、目標値と推計値であって実績ではない)。
今どうなっているか
2026年8月時点で確認できた最も新しい記録は、大分市の中心市街地商都復活支援事業のページ(更新日2026年7月10日)である。
同市は補助金の手続きの流れとして、まず株式会社大分まちなか倶楽部で出店場所・業種やイベントの開催場所・内容を相談・確認し、次に申請者が事業計画書を作り、添付書類をそろえたうえで再び同社で書類の内容を確認し、そのあと市役所の商工労政課に提出すると書いている。2026年7月10日の更新時点で、申請の入口に同社が置かれている。
公的な位置づけもある。 大分市の都市再生推進法人のページ(更新日2022年5月13日)によれば、同市が指定した都市再生推進法人は指定番号1の株式会社大分まちなか倶楽部の1件で、指定日は令和4年5月12日である。
広場の仮設店舗については、開始前の記事までしか確認できていない。 大分経済新聞(2021年10月21日)は、大分市が11月1日から広場で仮設店舗の運用を開始すると伝え、同社が委託を受けて運営すると書いている。 同紙によれば、これは民間の力を入れたときの効果と可能性を確かめるために行われるもので、当初の開始予定は7月1日だったが、新型コロナウイルスの影響で延ばされた。期間は3月31日までで、来年度以降の実施も視野に入れているとされていた。その後どうなったかは今回の出典からは確認できない。
否定的な記述は、市の計画そのものにある。 前節のとおり、売上の積算が目標を大きく下回ったことと、方針の定まっていない商店街で効果が出にくかったことが書かれている。同じ PDF は、もう一つの落ちる側の記述を載せている。 ただしそれは第2期基本計画の本文ではなく、その中に収載された大分市商工業振興計画の「7.商店街の現状と課題」の節である。同節の「(2)商店街の課題」は、出店の費用の一部を助成する仕組みを設けたものの、助成先の一部が廃業していることを課題として挙げている(時期は書かれていない)。これを書いたのは同社に19.05%を出資している大分市であり、第三者による検証ではない。 当事者である同社の側からの反論は、今回探した範囲では確認できなかった。大分合同新聞社は、同計画の株主表によれば同社に14.29%を出資している。同紙の報道をもって独立した検証とすることはできない。
出典
- 7009 まちづくり会社による中心商店街の「テナントマネジメント」に関する研究 : 大分まちなか倶楽部の商業系エリアマネジメント活動に着目して(都市計画) — 日本建築学会関東支部研究報告集(2013-03)
- 7367 まちづくり会社による中心商店街の「テナントマネジメント」に関する研究 : その1 大分まちなか倶楽部によるテナントマネジメントの内容と出店店舗の配置 — 都市計画(日本建築学会)(2013-08-30)
- 第2期 大分市中心市街地活性化基本計画 — 大分市(2017-07-28)
- 大分市で「まちなかバーゲン」 商店街と大型店が連携して初売り&福袋販売 — 大分経済新聞(2018-12-28)
- 大分市の「祝祭の広場」にテラス付き仮設店舗 先陣は「ラーメン日替わりリレー」 — 大分経済新聞(2021-10-21)
- 都市再生推進法人について — 大分市(2022-05-13)
- 大分市中心市街地への出店・イベント活動をサポートします — 大分市(2026-07-10)
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