空き家の古民家4棟を、フロント一つの分散型ホテルに仕立てた
篠山城下町ホテルNIPPONIA
この記録は運営主体の発信を含みます。
2024年に日本政策投資銀行と日本経済研究所が全国44施設の分散型宿泊施設の一覧にこの施設を含め、2025年にNOTEは客室棟が開業時の4棟11室から7棟19室に増えたと発表した。
何をしたか
兵庫県丹波篠山市の篠山城下町で、江戸〜明治期に建てられた空き家の古民家4棟を改修し、フロントを1棟に集約した分散型ホテル「篠山城下町ホテルNIPPONIA」を2015年10月に開業した。国家戦略特区の特例を使ったこの施設について、株式会社NOTEは2025年の10周年発表で「日本における分散型ホテルの先駆けとなり」と振り返っている。
誰が始めたか
colocal(2015-09-24)の筆者は、一般社団法人ノオトの理事であり株式会社NOTEリノベーション&デザインの代表取締役でもある藤原氏本人である。 同記事は、2009年(篠山城の築城400年)の設立以来、丹波篠山を拠点に古民家の再生活用に取り組んできたという活動歴を「writer's profile」として掲げているが、この活動歴がノオトとNOTEのどちらの実績として書かれているかは、本文からは判別できない。同記事は2015年9月24日の時点で、この秋に開業予定の投資ファンド活用事例として篠山城下町ホテルNIPPONIA(当時は10室での開業を計画)を紹介している。
開発を担った法人と、情報提供元とされる法人は異なる。 2025年10月22日のNOTEのニュースリリース(10周年発表)は、この施設を、歴史的建築物を活かしたまちづくりを手がける株式会社NOTEの各地事業の中でも最初の代表例と位置づけており、事業を率いる代表取締役として藤原岳史氏の名でメッセージを寄せている。real local(2016-03-31)は、施設の情報提供者を一般社団法人ノオトとしている。
規制の側では国家戦略特区制度が使われた。 NOTEの2025年発表によれば、当時の旅館業法は棟ごとにフロントを置くことを前提としており、複数の建物に客室が分かれるこの施設のような形は想定されていなかった。この施設は国家戦略特区制度を使い、フロント機能を1棟にまとめてよいとする特例許可を取得した。特区の枠組みを実際にどの行政主体(国・県・市のいずれか)が運用したかは、参照した4本のどこにも明記されていない。
いくらかかったか
篠山城下町ホテルNIPPONIA単体の投資額を明記した出典は無い。 unknown_fields に funding_scale を申告した。 colocal(2015-09-24)は、NOTEが古民家再生を産業化する手段として投資ファンド方式を採ったとし、開業前の時点で、この施設の開発資金はほぼ全額を投資ファンドを通じた民間資金でまかなう計画だと説明している。同記事は別に、古民家1棟の再生に一般に3,000万〜4,000万円の資金が必要になるという試算を示しているが、これはNOTEの古民家再生事業全体についての目安であり、篠山城下町ホテルNIPPONIA個別の金額として書かれたものではない。
資金調達の説明は出典によって異なる。 colocal(2015-09-24)は「投資ファンド」による資金調達と説明する一方、NOTEの2025年10月22日の10周年発表は、当時は古民家の担保評価が低く融資を受けにくかった中で、事業計画を練り上げたうえで公的な補助を入れずに銀行など民間金融機関からの借り入れだけで開発資金をまかなったと振り返っている。「投資ファンド」と「民間金融機関からの融資」という異なる言葉で資金源を説明している(discrepanciesに並置。10年を隔てた同一運営元の記述の違いであり、どちらかを採らずに両方を残す)。公的な補助金を使わなかったと明言しているのは、NOTEの2025年発表のみである。 colocal(2015年)は、古民家再生を全国規模で進めるには公共の補助事業だけでは資金が足りないという一般論を述べているが、この施設自体が補助金を使ったか否かには触れていない。
運営の収益面を直接示す出典も無い。 real local(2016-03-31)は宿泊料金を「1泊2食 24,000円〜」と伝えているが、稼働率や年間売上は書かれていない。colocal記事にある「稼働率30%で黒字化」という数字は、同じNOTEが篠山市内で運営する別施設〈集落丸山〉についての記述であり、篠山城下町ホテルNIPPONIA自体の数字ではないため、ここでは採らない。
真似するなら最低何が必要か
1. 地域内での改修実績を先に積んでおくこと。 colocal(2015-09-24)は「writer's profile」として、丹波・但馬エリアで約50軒の古民家を宿泊施設や店舗として再生活用してきたと紹介している(ノオトとNOTEのどちらの実績かは前述のとおり判別できない)。同記事はまた別の箇所で、過去7年間に60軒以上の古民家再生を手がけてきた知見をもとに、集落丸山(稼働率30%で黒字化)や旧木村酒造場EN(平均70%稼働)を実例として投資家に事業ごとの収益状態を説明し、デューデリジェンスを受けたと述べている。
2. 複数棟にフロントを分散させるための規制上の特例を取ること。 NOTEの2025年発表によれば、当時の旅館業法は各棟にフロントを設けることを前提としており、この施設は国家戦略特区制度を使い、フロントを1棟にまとめる形での営業を特例として認めてもらった。同発表は、この実績が2018年の旅館業法改正(全国で分散型ホテルの展開を可能にした改正)につながったと述べている。
3. 公的補助金に頼らない資金調達の道筋を作ること。 NOTEの2025年発表は、担保価値の低い古民家に融資がつきにくかった当時の状況の中で、現実的な事業計画により民間金融機関からの融資のみで開発を実現したと述べている(colocal 2015年の記事は「投資ファンド」による調達と説明しており、資金源の説明は discrepancies のとおり食い違う)。
4. 地元の商店主・飲食店と組み、宿泊者をまちに回遊させる仕組みを作ること。 real local(2016-03-31)は、客室やレストランを城下町周辺に点在させ、ホテル・宿泊客・地元の商店主が三者一体となり、まち全体の利益向上も目的とする形をホテルの構想に組み込んだと伝えている。
5. 母体団体と開発会社を分けること。 real local(2016-03-31)は施設の情報提供者を一般社団法人ノオトと表記しており、NOTEの2025年発表は開発を担ったのが株式会社NOTEだと述べている。施設の日々の運営を具体的にどの法人が担っているかは、参照した4本のどこにも明記されていない。
6. 小さく始めて棟数を段階的に増やすこと。 discrepanciesのとおり開業時の客室規模は出典によって10室・11室と揺れるが、NOTEの2025年発表は開業時の4棟(11室)から10年で7棟19室へと段階的に増えたと伝えている。
今どうなっているか
2025年10月22日時点で確認できたのは、運営元NOTEが自ら発表した10周年の振り返りである。 同発表によれば、篠山城下町ホテルNIPPONIAは2015年10月3日の開業から10年を迎え、客室棟は開業時の4棟11室から7棟19室へと増えている。NIPPONIA事業全体としては、2025年10月時点で国内33地域に広がり、宿泊施設・店舗として再生した古民家などの歴史的建築物は合計約180棟にのぼるとされる。同発表は、この施設が古民家活用における金融スキーム確立の先例となり、フロント集約の特例実績が2018年の旅館業法改正につながったと位置づけている。
独立した第三者の記録としては、2024年4月の日本政策投資銀行・日本経済研究所の調査報告がある。 同報告は全国の分散型宿泊施設44件の一覧に、篠山城下町ホテルNIPPONIAを2015年開業・所在地丹波篠山市の施設として含めている。同報告は他の施設(NIPPONIA大洲など)ほど詳しい個別記述をこの施設には割いていない。この一覧は2023年12月時点で確認できた開業実績の整理であり、その後も営業を続けているかどうかを示すものではない。
運営面の直近の実績(稼働率・収益・訪問者数など)を裏付ける独立した出典は確認できなかった。 開業から10年後の状況について書いているのは運営元自身の発表のみであり、独立した媒体による最新の検証記事は今回の調査では見つからなかった。
出典
- 投資ファンドで実現する 古民家再生の未来(その1)。 一般社団法人ノオト vol.5 | 「colocal コロカル」ローカルを学ぶ・暮らす・旅する — colocal(コロカル)(2015-09-24)
- real local その他【篠山】400年の歴史にとけこむように泊まる | reallocal|移住やローカルまちづくりに興味がある人のためのサイト【宿・拠点】 — real local(2016-03-31)
- 古民家等を活用した分散型エリア開発の現状整理 — 株式会社日本政策投資銀行 新潟支店/株式会社日本経済研究所(2024-04)
- NIPPONIA事業のフラッグシップモデル 「篠山城下町ホテル NIPPONIA」事業が10周年 | NIPPONIA|なつかしくて、あたらしい、日本の暮らしをつくる — NIPPONIA(株式会社NOTE)(2025-10-22)
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