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トンレサップの水上漁村が、密漁監視のかたわら宿泊と渡し船を観光客に提供し始めた

Phat Sanday

カンボジア / コンポントム州 / カンポンスヴァーイ郡

この記録の出典は単一の媒体によるものです。

2019年の設立以降、2022・2024・2026年と報道が続き、2026年には養殖・観光への生業転換計画が報じられている。

何をしたか

カンボジア中部、コンポントム州カンポンスヴァーイ郡のPhat Sandayコミューンにある水上集落の取り組み。トンレサップ湖の氾濫林23,000ヘクタールを対象に、2019年に「Phat Sanday エコツーリズム・コミュニティ」が設立された(Khmer Times 2024年12月24日)。住民のパトロール隊が違法漁業や森林伐採を取り締まる一方、ゲストハウスや渡し船、展望塔を整え、氾濫林や日没の見学、燻製・干し魚の購入へと観光客を案内している。2022年にはインドとの間で、同コミュニティのエコツーリズム活動を支援する覚書が結ばれた。

誰が始めたか

「Phat Sanday エコツーリズム・コミュニティ」は2019年に設立された。設立を主導した個人・組織名は、参照した5本のKhmer Times記事のいずれにも書かれていない。

別に、2021年9月には、同コミューン内のある集落の住民が自然保護のための住民組織づくりを申請したと報じられている。BirdLife International のカンボジア・プログラム・マネージャー、Bou Vorsak氏によれば、Stung Sen ラムサール登録地内の小さな集落に暮らす51世帯は長年この地で漁業に頼って生活しており、自分たちで資源を管理・保護できるよう新しい住民組織の設立を求めたという(Khmer Times 2021年9月20日)。この住民組織と、2019年設立の「エコツーリズム・コミュニティ」の関係は、出典からは特定できない。

国際的な支援は2022年に確認できる。4月1日、カンボジア観光省とインド大使館の間で2件の覚書が交わされ、そのひとつは「Phat Sanday エコツーリズム・コミュニティにおけるエコツーリズム活動の強化」を目的とした。インド大使館の発表によれば、この事業は「Phat Sanday エコツーリズム小委員会」の存続を支え、違法漁業や森林伐採への関与を減らし、女性の参加を高めることも狙うとされる(Khmer Times 2022年4月2日)。

2024年以降は、カンボジア政府側の関与がたびたび報じられている。2024年9月にはコンポントム州知事、2026年2月には副首相が、それぞれPhat Sandayを訪れている。

いくらかかったか

施設整備費・運営費・入場料収入の額は、参照した5本のいずれにも書かれていない。unknown_fieldsfunding_scale を申告した。

規模の手がかりになる数字はある。エコツーリズム・コミュニティは23,000ヘクタールを対象とし、うちパトロール隊が管理する氾濫林は921ヘクタール、保全用の水路は5本ある(Khmer Times 2024年12月24日)。同コミューンの世帯数は、2019年の国勢調査で1,230世帯・人口5,531人(Table P-06 Kampong Thom)。2024年12月の記事では1,000世帯超、2026年2月の記事ではおよそ1,300世帯がこの地域で暮らすとされ、住民の多くが漁業を主な生業としている。2022年のインドとのMoUによる支援額は、参照した記事には記載がない。

真似するなら最低何が必要か

この事例で真似できる単位は、景観そのものではなく資源管理の組織を観光の受け皿に転用したことである。

第一に、既存の資源管理組織を土台にすること。Phat Sandayでは、違法漁業や森林伐採を取り締まるパトロール隊が先にあり、そのパトロール範囲(氾濫林921ヘクタール)がそのまま観光客を案内する対象になっている。ゼロから観光施設を作るのではなく、すでにある管理体制の上に観光を乗せている。

第二に、外部の資金・提携を得られる形の単位を持つこと。2022年のインドとのMoUは「Phat Sanday エコツーリズム・コミュニティ」という単位を名指しして結ばれている。国際的な支援を受けるための、名前のついた受け皿が先にあった。

第三に、案内できる具体的な見せ場を用意すること。ゲストハウス、渡し船、展望塔、氾濫林、日没の眺め、燻製・干し魚の購入といった、個別に案内できる要素がそろっている(Khmer Times 2024年12月24日)。漠然とした自然の豊かさではなく、何を・どこで見せるかが具体的である。

第四に、単一の生業に頼りすぎない仕組みを最初から考えること。2026年2月、副首相ヴォンサイ・ヴィソット氏は、住民に漁業に加えて養殖業や野菜栽培へ生業を広げるよう促し、「Fishing alone cannot make people's lives more prosperous(漁業だけでは人々の暮らしは豊かにならない)」と述べた(Khmer Times 2026年2月19日)。観光を含む複数の収入源を、漁獲量の減少に備えて並行して育てようとしている。

第五に、行政の反復訪問を継続的な支援のてこにすること。2024年9月に州知事、2026年2月に副首相がそれぞれ現地を訪れ、後者の訪問では新設のコミュニティ施設の落成式が開かれ、住民への寄付も行われた。一度きりの視察で終わらせず、複数年にわたって政府の関与を引き出している。

今どうなっているか

2026年9月時点で確認できたのは、2026年2月19日の副首相訪問の報道までである。

2026年2月、副首相ヴォンサイ・ヴィソット氏はPhat Sandayを訪れ、新設のコミュニティ施設の落成式に出席した。同氏は住民に対し、漁業に加えて養殖業や野菜栽培へと生業を広げるよう促すとともに、観光客誘致に向けた「Phat Sanday ツーリズム・コミュニティ」の整備を政府として支援していく考えを示した。ただしこれは2026年2月時点でなお計画段階であり、2019年に設立された既存の「Phat Sanday エコツーリズム・コミュニティ」とどう関係づけられるかは、出典からは分からない。Phat Sandayとステンセン市を結ぶ水路の浚渫についても、技術・法制面の検討にとどまり、実施には至っていないと報じられている。

status_current は「継続中」とした。2019年の設立から5年後の2024年12月の記事でも、ゲストハウスや渡し船による観光客の受け入れが続いている記述があり、2026年2月の記事でも住民と行政の双方が関与を続けている記述があるためである。

出典

  1. New community proposed to protect Stung Sen Ramsar site — Khmer Times(2021-09-20)
  2. Two MoUs to promote ecotourism in Cambodia signed — Khmer Times(2022-04-02)
  3. Kampong Thom Governor calls on fishermen to prevent illegal fishing, promote tourism — Khmer Times(2024-09-25)
  4. Ecotourism Community on Tonle Sap Lake a must-visit destination — Khmer Times(2024-12-24)
  5. Fish farming, tourism seen as new economic lifeline for Kampong Thom — Khmer Times(2026-02-19)

最終確認日 2026-09-03

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