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歩けるようにするエネルギー・資源循環5万人未満

第一次大戦後に国境で分断された双子都市を、共有の歩行者広場と国境を越える木質チップ地区熱供給網で結び直した

Valka

ラトビア / ヴィゼメ地方(Vidzeme) / ヴァルカ市(Valkas novads)

第一次大戦後に国境で分断された双子都市を、共有の歩行者広場と国境を越える木質チップ地区熱供給網で結び直した
© ERR News(エストニア公共放送) — この写真が載っている記事

2025年11月には財政難、2026年4月には見えない壁の残存が報じられ、開始2020年から6年後も独立媒体による検証的な報道が続いている。

何をしたか

エストニアとの国境で分断されたラトビアの町ヴァルカと、対岸エストニアのヴァルガは、かつて一つの都市「ヴァルク」だったが、1920年の国境画定で二つに割れた。両自治体は国境をまたぐ共有の中央広場を整備し、地元の木材やレンガを使ったペルゴラ、両国にまたがって座れるベンチや国境をまたいで漕げるブランコを設け、歩いて行き来できる空間に変えた(ERR, 2020-12-27)。2025年10月には両国の熱供給網を結ぶ1.6kmの越境パイプラインが開通し、ヴァルカ側の木質チップ発電所の余剰熱をエストニア側へ供給する仕組みが始まった(ERR, 2025-10-07)。

誰が始めたか

広場の整備は、ラトビアのヴァルカと国境を挟んだ対岸エストニアのヴァルガ、両自治体が近年進めてきた取り組みの一環である。ERR(2020-12-27)は、両者が「この分断を和らげる方法」を模索してきたと伝えている。同記事によれば、ヴァルガの自治体建築家イジー・ティンテラ氏は、分断された都市空間を一つに戻すことと、この場所ならではの特徴を際立たせることという相反する二つの課題に建築家たちが向き合ったと説明した。設計競技はカタルーニャの建築家グループが手がけ、木材やレンガなど地元になじむ素材のペルゴラ、両国にまたがって座れるベンチ、国境をまたいで漕げるブランコを広場に設けたという(同)。Euronews(2026-04-27)は、2025年9月の若者向けハッカソン「Hack the Border」の文脈で、同じくティンテラ氏を、双子都市の都市の将来に携わった元ヴァルガの建築家として改めて紹介している。

一方、越境の地域熱供給網を実現させたのは、エストニアのエネルギー企業ユーティリタスである。 ERR(2025-10-07)によれば、同社は2024年3月にヴァルカ側の熱電併給プラントを買収し、既に保有していたヴァルガ側のボイラー施設と合わせて両国境の町の熱供給を一手に握った。同社CEOのプリート・コイト氏は、熱と電力がますます統合された分野になりつつあると考えており、基本負荷で発電するヴァルカのプラントの余剰熱を地域熱供給網に供給できるようになったことを喜ばしく思うと述べたという(同)。地区熱供給部門責任者のロベルト・キット氏は、この配管が新規の発電設備を建てるより経済的であり、「賢い資源の使い方」でもあると述べた(同)。

いくらかかったか

越境パイプラインの建設費は、ERR(2025-10-07)によれば約200万ユーロで、これは民間企業が自己資金で越境インフラを整備した初めての例だという。 同記事は、配管の総延長が1,600メートル超で、建設工事は2025年8月末に完了したと伝えている。

一方、ヴァルカ自治体の財政は苦しい。 ERR(2025-11-21)によれば、同自治体は2025年9月末時点で50万ユーロ超の債務を抱えており、そのうち15万ユーロは主にユーティリタスへの暖房費の未払いだという。同記事は、ヴァルガ側に住民登録した約1,000人のラトビア人の税収がエストニアに入る一方、その家族の一部は依然ラトビア側のサービスを使っており、ヴァルカ市議会議長ヴェンツ・アルマンズ・クラウクリス氏は、これを国レベルで補償する仕組みが必要だと訴えていると伝えている。

若者向けの越境ハッカソン「Hack the Border」(2025年9月開催)は、総額83,775ユーロのうち67,020ユーロ(8割強)を、Interreg エストニア・ラトビア プログラム経由の欧州地域開発基金(ERDF)でまかなったとEuronews(2026-04-27)は報じている。 広場そのものの総事業費は、参照した5本の出典のいずれにも書かれていない。パイプラインとハッカソンの額は出典にあるため、funding_scaleにはその2件を入れ、unknown_fieldsからは外した。

真似するなら最低何が必要か

第一に、新設ではなく既存設備の余剰を使うこと。 ERR(2025-10-07)によれば、ヴァルカ側とヴァルガ側の熱源はどちらも木質チップを燃料としているが、これまでヴァルカ側の余剰能力は使われず、エストニア側は寒い時期にオイルシェール焚きのボイラーに頼っていたという。両施設をパイプラインでつなぎ余剰熱を融通する方が、新規の発電設備を建てるより経済的だと、ユーティリタスの地区熱供給部門責任者ロベルト・キット氏は同記事で述べている。

第二に、両国にまたがる資産を既に持つ主体に実行を委ねること。 ERR(2025-10-07)によれば、ユーティリタス社は2024年3月にヴァルカ側のプラントを買収する以前から、ヴァルガ側のボイラー施設を保有していた。同記事は、この約200万ユーロの投資を、民間企業が自己資金で越境インフラを整備した最初の例だとしている。

第三に、境界そのものを設計対象にすること。 ERR(2020-12-27)によれば、設計競技を経て、国境線をまたいで座れるベンチや漕げるブランコなど、境界を隠すのではなく体験できる要素として広場に組み込んだ。

第四に、共有インフラの費用負担を先に取り決めておくこと。 ERR(2025-11-21)が伝えるように、ヴァルカ自治体はヴァルガ側に住民登録した約1,000人分の税収を得られず、暖房費を含む債務が膨らんでいる。広場やパイプラインという物理的なつながりを作っても、税収や公共サービス費用の国境をまたぐ精算の仕組みが伴わなければ、片方の自治体だけが財政負担を負う結果になりうる。

第五に、物理的な統合だけでは埋まらない溝を前提に、継続的な人的交流の場を別途設けること。 Euronews(2026-04-27)は、国境が物理的に撤去されてから約20年が経っても目に見えない壁が残っていると指摘し、その対応として若者向け越境ハッカソン「Hack the Border」が2025年9月に開催されたと伝えている。

今どうなっているか

2025年11月時点で、ERRはヴァルカ自治体が財政難に陥っていると報じている。 同記事によれば、同自治体はラトビアで最小の人口(8,000人)の自治体でありながら、2025年9月末時点で50万ユーロ超の債務を抱え、そのうち15万ユーロは主にユーティリタスへの暖房費の未払いである。ヴァルガ市長モニカ・ロゲンバウム氏は、両国間に本格的な越境の会計精算の仕組みは無く、芸術学校の児童向け費用をエストニアがラトビアに支払う協定があるだけだと述べたという。ラトビア財務相アルヴィルス・アシェラデンス氏は、両国とも独自の法制度を持つが、こうした国境の町により賢い経済モデルを見出した国もあるはずだとコメントしたと同記事は伝えている。

2026年4月時点で、Euronewsは、物理的な国境が撤去されてから約20年が経っても、両都市の間に目に見えない壁が残っていると報じている。 住民は依然として別々の言語・行政・学校制度のもとで、互いに交わらない生活を送っているという。同記事は、この溝に対応する試みとして、EU出資(総額83,775ユーロのうち67,020ユーロ)による若者向け越境ハッカソン「Hack the Border」が2025年9月に開催され、ヴァルガ県職業訓練センターとヴァルカのヤーニス・ツィムゼ・ギムナジウムの生徒が参加したと伝えている。

出典

  1. Valga and Valka get unique shared central square | News | ERR — ERR News(エストニア公共放送)(2020-12-27)
  2. Along the Latvia-Estonia border: Valka-Valga Express — LSM English(ラトビア公共メディア)(2023-11-25)
  3. Europe's first cross-border heating link opens between Estonia and Latvia | News | ERR — ERR News(エストニア公共放送)(2025-10-07)
  4. Valka Municipality on the Estonian-Latvian border in dire financial straits | News | ERR — ERR News(エストニア公共放送)(2025-11-21)
  5. Two countries, one city: how young people are hacking the border between Estonia and Latvia — Euronews(2026-04-27)

最終確認日 2026-09-03

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