日本向け輸出が細った黒鮪魚を、文化局長の発案で観光季の看板産品に据え、開始当初は総統も開幕に招いて四半世紀続く全国区の名物に育てた
屏東黑鮪魚文化觀光季
2005年の開幕行事、2019年の漁獲量減少への懸念、2024年の観光署認定と周辺地域への波及、 2026年の開幕音楽会の来場者数が出典で確認できる。
何をしたか
台湾南部・屏東県東港鎮は黒鮪魚(クロマグロ)の水揚げで知られたが、当時輸出の8割を占めていた日本向け需要が同国の経済不振で細り、価格が下がった。困った漁民が県に陳情し、同席していた屏東県文化局長の洪萬隆は、東港魚市場の黒鮪魚競り総額が年3億元を超えると知り、季節性と話題性を備えた産品として着目した。洪は当時の県長・蘇嘉全にメモで「文化局が担当してはどうか」と提案し、2001年、文化局主導で「黒鮪魚文化観光季」が始まった。桜花蝦・油魚子と合わせ「東港三寶」と名付け、開幕式に話題性のある人物を招く(開始から5年間〈2001〜2005年〉は陳水扁総統が毎年代言人を務めた)などのメディア戦略を伴う年次観光季として定着し、2026年で26回目を数える。
誰が始めたか
2001年の開始時に仕掛けたのは屏東県文化局で、発案者として名前が挙がるのは当時の局長・洪萬隆である(台灣光華雑誌2005年7月。この時点で洪は既に局長職を退いている)。同誌によれば洪はもと中山大学音楽系の教員で、地域の産業を掘り起こす委員会を率いる中で黒鮪魚に着目し、当時の県長・蘇嘉全(のち内政部長)にメモで企画を持ちかけたという。現在の主催は屏東県政府傳播暨国際事務処であり(GVM城市学2024年4月22日、三立新聞網2026年5月5日)、東港区漁会が「第一鮪」の認定や競りを担う共催者として関わり続けている(GVM城市学2024年4月22日)。文化局から現在の主管部局に至るまでの変遷は、参照した出典からは確認できない。
いくらかかったか
観光季自体の運営予算は、参照した出典のいずれにも記載がない。分かるのは活動が生んだ経済効果の推計で、台灣光華雑誌(2005年7月)は、毎年5〜6月の観光季期間中、東港区漁会の産品販売・駐車場収入だけで少なくとも1500万元、周辺の飲食店の税収も200万元を超えるとし、宿泊・交通など周辺消費まで含めた経済効果を10億元以上と概算している。近年は開幕を飾る「第一鮪」の競り自体が象徴的な数字を生んでおり、2024年には301.8キロの個体が1キロ10,300元・総額約310万元で落札され(GVM城市学)、2026年には190キロの個体が1キロ10,600元・総額201万元超で落札されたと屏東県長・周春米が明かした(三立新聞網)。
真似するなら最低何が必要か
台灣光華雑誌(2005年7月)が伝える手順を整理すると、まず既存の産品の中から、年間の取扱総額が大きく、漁期や収穫期が限られて季節性があり、捕れ方や食べ方に語れる物語がある産品を選ぶ(洪萬隆が挙げた3条件)。次に単独の産品にとどめず、桜花蝦・油魚子のような近い産品を束ねて「東港三寶」のようなブランド名を与える。開幕には話題性のある人物を招き、地方の報道が全国メディアに埋もれがちな弱さを突破する仕掛けを作る(台灣光華雑誌によれば、開始から5年間〈2001〜2005年〉は陳水扁総統が毎年開幕の代言人を務めた)。会期中は美食情報の紹介から始め、文化・自然の魅力を重ね、話題を演出するという段階的な発表計画を立て、週単位で記者会見を重ねて報道を切らさない。地元の飲食店を巻き込み、価格帯や品数を定めた料理コンテストを開いて郷土料理を競わせ、勝者に観光ツアーの食事提供権を与えるなど、産品の付加価値そのものを競争の仕組みにする。加えて、PanSci泛科学(2019年)が漁獲量の減少を懸念する寄稿を掲載したように、看板産品の資源量が細る可能性は織り込んでおく必要がある。GVM城市学(2024年)は、近年の観光季が保育議題の高まりを受けて、地方信仰や漁村の生活文化、体験型の小旅行を加える方向に内容を広げたと報じている。
今どうなっているか
2026年8月時点で確認できるのは、同年5月2日に開幕した「2026屏東黑鮪魚文化観光季」(7月5日まで)である。開幕日夜の海洋音楽会には1万人超が集まり(三立新聞網)、「第一鮪」は190キロの個体が1キロ10,600元・総額201万元超で競り落とされ、「第一鮪」の捕獲以降、今季の黒鮪魚の累計漁獲は233尾を超え、漁獲は安定していると屏東県長・周春米が述べた。2024年時点でGVM城市学は、観光季が屏東県東港鎮だけでなく隣接する小琉球などの周辺地域にも恩恵を及ぼしており、交通部観光署が台湾の重要産業節慶の一つに挙げていると伝えている。いっぽうPanSci泛科学(2019年)は、東港の黒鮪魚年間漁獲量が2003年の800トン超から2012年には約80トンまで落ち込んだと、寄稿者の鍾国南氏(引退した専門家)の観察として紹介し、観光季の名称が「黒鮪季」から「黒鮪祭」に変わりかねないと問いかけている。この保育面の懸念に対する屏東県政府自身の直接の反論は、参照した出典からは確認できなかった。ただしGVM城市学(2024年)は、近年の観光季が地方信仰や漁村の生活文化、体験型の小旅行を加える方向で内容を広げていると報じており、漁獲量そのものの回復に向けた取り組みかどうかは出典からは判断できない。
出典
- 跟著鮪魚到東港──黑鮪魚文化觀光季 — 台灣光華雜誌(2005-07-01)
- 黑鮪季還是黑鮪祭?關於黑鮪魚在海洋文化的真相與反思 — PanSci 泛科學(原載:奧秘海洋 雙月刊)(2019-09-05)
- 重逾300公斤東港第一鮪以新高價賣出!揭開東港黑鮪魚季序幕 — 城市學(遠見雜誌)(2024-04-22)
- 屏東嚐「鮮」去 黑鮪魚觀光季5/2開鑼 — 自由時報(2026-04-28)
- 2026屏東黑鮪魚文化觀光季開幕!海洋音樂會卡司、直播、停車一覽 — NOWnews今日新聞(2026-05-02)
- 2026屏東黑鮪魚文化觀光季強勢登場 首場音樂會萬人嗨翻東港 — 三立新聞網(SETN)(2026-05-05)
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